更新日:2026年10月12日 (月)
公開日:2026年9月9日 (水)
借地権割合とは?調べ方や相続税評価の計算・売却時の注意点を解説
サマリー
借地権付き建物を相続した際や売却を検討する際、「借地権割合」という言葉を目にして、その意味や計算への影響が気になっている方も多いのではないでしょうか。
借地権割合とは、土地全体の更地価格に対して借地権が持つ経済的価値の割合を示す指標であり、主に相続税などの財産評価を行う際に用いられます。
ただし、税務上の評価と実際の市場取引価格が異なる場合もあるため、基本的な仕組みを把握しておくことが大切です。
この記事では、借地権割合の概要や調べ方、相続税評価額の計算手順、売却時の注意点について解説します。
借地権割合とは|基本的な定義と設定される目的

借地権割合の基本的な定義と役割
借地権割合とは、土地全体の完全な所有権(更地価格)に対して、借地権が占める経済的価値の割合を示した数値です。
他人の土地を借りて建物を所有している場合、その敷地の価値は地主側の持つ「底地権(貸宅地)」と、建物の所有者である借主側の「借地権」に分かれます。
借地権割合は、この土地全体の評価額のうち、借地人側の権利がどれほどの割合に相当するかを表す基準となります。
この割合が定められている主な目的は、相続税や贈与税を課税するにあたり、対象となる財産価値を公平に評価するためです。
国税庁が地域ごとの取引慣行や土地の利用状況を考慮して設定しており、毎年公表される路線価図や評価倍率表に反映されています。
国税庁が公表する借地権割合は、主に税務上の財産評価を公平に行うための基準として用いられます。
権利形態による評価の基本的な考え方
借地権には、契約更新が認められる「普通借地権(旧借地法に基づく借地権を含む)」のほか、契約期間満了により土地が返還される「定期借地権」など複数の形態が存在します。
国税庁が定めている路線価図等の借地権割合は、原則として契約更新が前提となる普通借地権を想定したものです。
そのため、普通借地権を評価する際には、地域ごとに定められた借地権割合をそのまま適用して算出する仕組みとなっています。
一方で定期借地権の場合は更新がないため、残存期間や地代の設定状況などに応じて価値が逓減していく特徴があります。
したがって、通常の借地権割合をそのまま掛けるのではなく、独自の計算式に基づいて評価額が算出される点に留意が必要です。
借地権割合の調べ方|路線価図と評価倍率表の確認手順
対象となる土地の借地権割合は、国税庁のウェブサイト上で公開されている「財産評価基準書」を参照して調べることができます。
確認の手順は、その土地が市街地などに多い「路線価地域」にあるか、郊外や農村部などに多い「倍率地域」にあるかによって異なります。
路線価図による確認手順とアルファベット記号の見方
市街地などに位置する土地の借地権割合を調べる際は、財産評価基準書の中にある路線価図を利用します。
- 国税庁のウェブサイトにある「財産評価基準書」へアクセスし、対象の都道府県と該当する年分を選択する
- 「路線価図」を選択し、市区町村の索引から対象地が含まれる図面ページを開く
- 土地が接している道路上に記載された数字とアルファベットの組み合わせ(例:「300D」など)を確認する
道路上に表示されている数字は1平方メートルあたりの千円単位の単価を示し、末尾に付いているアルファベットが借地権割合を表しています。
アルファベットはAからGまでの7段階に区分されています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
路線価が定められていない倍率地域での確認手順
市街化調整区域や農村部など、路線価図が作成されていない地域については「評価倍率表」を参照して借地権割合を確認します。
財産評価基準書の目次から「評価倍率表(一般の土地等用)」を選択し、該当する市区町村・町名(大字)・地目(宅地など)の一覧を探します。
表内の「借地権割合」欄に記載された割合が適用されます。
評価倍率表の借地権割合欄が空欄(「−」表示)となっている地域は、借地権の取引慣行がない地域として扱われ、税務上の借地権割合は0%(自用地評価)として取り扱われることが一般的です。
地域や用途による借地権割合の一般的な傾向
借地権割合は全国一律ではなく、土地の立地条件や需要の高さ、取引慣行などを考慮して地域ごとに定められています。
一般的に、土地価格が高い東京都心などの繁華街や商業地域ではA(90%)やB(80%)が多く指定されます。
標準的な住宅地ではC(70%)やD(60%)が多く見られ、郊外や地方都市の住宅地ではE(50%)やF(40%)が指定される傾向にあります。
借地権割合を用いた相続税評価額の計算方法
相続税や贈与税の申告において、借地権の財産評価額は自用地評価額に借地権割合を乗じて算出するのが基本的な仕組みです。
自用地評価額とは、他者による権利設定や利用制限のない、完全な所有権としての更地評価額を指します。
借地権(借主側)の評価額計算と具体例
土地を借りて建物を所有している借地権者の財産評価は、路線価図などから算出した自用地評価額に対象地域の借地権割合を掛け合わせて求められます。
計算式は「借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合」となります。
たとえば、自用地評価額が4,000万円と評価される土地で、指定された借地権割合が60%(記号D)の地域にある場合、借地権の相続税評価額は「4,000万円 × 60% = 2,400万円」として算出されます。
貸宅地(地主側・底地)の評価額計算の仕組み
第三者に土地を貸している地主側の権利(底地)は、税務上「貸宅地」として評価されます。
借地権が設定されている土地は地主自身が自由に使用・処分できない制約があるため、借地権割合に相当する部分が控除されます。
貸宅地の計算式は「自用地評価額 × (1 - 借地権割合)」です。自用地評価額4,000万円、借地権割合60%の土地であれば、地主側の評価額は「4,000万円 × (1 - 0.60) = 1,600万円」となり、借主側と地主側の評価額を合算すると更地評価額と一致する関係になっています。
借地上の建物を第三者に賃貸している場合(貸家建付借地権)
借地の上に建築したアパートや賃貸戸建てなどを第三者に貸し出している場合、借地権者自身にも借家人に対する利用の制約が生じます。
このような権利関係は税務上「貸家建付借地権」と呼ばれ、通常の借地権評価額からさらに減額して計算されます。
貸家建付借地権の計算式は「自用地評価額 × 借地権割合 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)」です。借家権割合は全国一律で30%と定められており、賃貸割合は満室の状態で100%(1.0)として取り扱われます。
土地およびその上の建物の利用形態によって適用される計算式が異なるため、誰がどのように使用しているかを確認したうえで評価額を算出する必要があります。
| 権利の区分 | 評価額の計算式 | 備考 |
|---|---|---|
| 借地権(自己利用) | 自用地評価額 × 借地権割合 | 自ら居住・利用している建物の敷地 |
| 貸宅地(地主側) | 自用地評価額 × (1 - 借地権割合) | 他人に土地を貸している状態(底地) |
| 貸家建付借地権 | 自用地評価額 × 借地権割合 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合) | 借地上の建物を第三者に賃貸している状態 |
借地権割合と実際の売却価格(実勢価格)の違いと留意点
相続税の財産評価に用いられる借地権割合は、税務上の公平な課税を目的に定められた画一的な基準です。
そのため、不動産市場において実際に借地権を売却する際の取引価格(実勢価格)とは一致しないケースが少なくありません。
路線価に基づく借地権割合は税務上の目安であり、実際の市場取引価格(実勢価格)とそのまま連動するとは限りません。
実勢価格が評価上の割合と乖離する大きな要因の一つとして、買い手側の住宅ローン審査が挙げられます。
借地権付き建物は完全な所有権の不動産と比べて担保評価が慎重に判断されやすく、融資を受けられる金融機関が限られる傾向があります。
このような事情から市場における需要が限定されやすくなり、税務上の借地権割合から試算した金額よりも低い水準で取引される場合があります。
取引価格や手取り額に影響を与える契約条件
借地権を第三者へ売却する際には、個別契約の内容や地主へ支払う承諾料などが売却価格や最終的な手取り額を左右します。
| 影響要因 | 内容と価格・手取りへの影響 |
|---|---|
| 譲渡承諾料(名義書換料) | 第三者へ譲渡する際に地主へ支払う費用であり、売主の手取り額を減少させる要因となります。 |
| 借地契約の残存期間 | 契約期間が短い場合、近い将来に更新料が発生する懸念などから買主側の評価が下がりやすくなります。 |
| 建替え承諾の可否 | 将来の増改築や建替えに地主の承諾が必要な場合、その難易度や条件が取引価格に影響します。 |
| 地代・更新料の水準 | 近隣相場と比べて毎月の地代が高い場合、買主の維持負担が重くなるため需要が狭まる傾向があります。 |
特に譲渡承諾料は借地権価格の一定割合を目安として協議されることが一般的であり、売却による実際の手取り額を事前に見積もるうえで重要な要素となります。
地主の承諾が得られない場合の対応と売却の選択肢
借地権を第三者に譲渡する際には、原則として地主の承諾を得る必要があります。承諾を得ないまま売買を進めることは重大な契約違反にあたります。
地主の承諾を得ずに無断で借地権を譲渡した場合、借地契約の解除原因となるおそれがあるため十分な注意が必要です。
地主との話し合いで承諾が得られない場合や、不相当に高額な承諾料を求められた場合には、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を申し立てる「借地非訟手続」を利用できる規定があります。
また、第三者への売却だけでなく、地主に借地権を買い取ってもらう交渉や、地主が保有する底地と借地権を合わせて完全な所有権として第三者に共同売却する方法なども選択肢となります。それぞれの関係性や状況に応じた現実的な方針の検討が大切です。
借地権の相続や売却に伴う交渉・手続きにおける弁護士への相談

地主との条件調整や承諾交渉における法的な確認
借地権の売却を検討する際、第三者への譲渡には原則として地主(底地人)の承諾が必要となります。
当事者同士で話し合いを行う場合、譲渡承諾料の金額や将来の利用条件などを巡って意見の食い違いが生じることも珍しくありません。
契約内容やこれまでの経緯を法的な観点から整理せずに交渉を進めてしまうと、双方の感情的な対立を招き、話し合いが進展しなくなる懸念があります。
事前に法的な助言を得ながら契約条項を確認しておくことは、冷静な協議を進めるうえで役立ちます。
承諾をめぐる対立や借地非訟手続への対応
地主からの承諾が得られない場合や、承諾料の提示額をめぐって合意に至らないケースでは、裁判所に対して承諾に代わる許可を申し立てる「借地非訟手続」の利用が検討されます。
借地非訟手続においては、譲渡を行う相当の理由や適正な承諾料の目安などを裁判所に主張し、適切に手続きを進める必要があります。
裁判手続きの進行や書面の作成には法的な知見が求められるため、弁護士への相談が視野に入ります。
地主との合意形成が難しい状況であっても、法的に用意されている手続きや選択肢を正しく把握しておくことが重要です。
複雑な権利関係の整理と弁護士への相談
借地権の処分には第三者への売却だけでなく、地主への買い取り交渉や底地との共同売却など、いくつかの選択肢が存在します。
状況に応じた対応策を選択するためには、権利関係や契約上の義務を明確に把握しておくことが不可欠です。
相続や売却に伴う地主との交渉、承諾料の取り決めなどに関して手続きや法的な判断に迷う場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、助言を受けることが解決への一歩となります。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。