更新日:2026年9月9日 (水)
公開日:2026年9月9日 (水)
借地権は売却できる?売却方法や流れ・地主の承諾を解説
サマリー
「親から相続した借地上の実家を整理したい」「住み替えのために借地権を手放したい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
土地を借りて建物を所有する借地権であっても、適切な手続きを踏むことで売却が可能です。
ただし、借地権の種類によっては地主の承諾が必要となるなど、通常の不動産売却とは異なる注意点が存在します。
この記事では、借地権を売却する具体的な方法や進め方の流れ、地主の承諾が得られない場合の対処法について分かりやすく解説します。
借地権(借地権付き建物)は売却できるのか
借地権付き建物は原則として売却が可能
借地権とは、建物を所有するために他人の土地を借りる権利のことです。
借地権自体に財産的な価値が認められているため、借地上の建物とともに第三者へ売却(譲渡)することが法律上認められています。
ただし、土地そのものを所有している通常の不動産売買とは異なり、土地所有者(地主)との権利関係が伴うため、売却にあたっては借地権の種類に応じた所定の手続きを踏む必要があります。
借地権の種類(賃借権・地上権)による売却要件の違い
借地権には大きく分けて「賃借権」と「地上権」の2種類があり、どちらが設定されているかによって売却時に地主の承諾が必要かどうかが異なります。
| 借地権の種類 | 地主の承諾 | 登記の義務 | 一般的な実態 |
|---|---|---|---|
| 賃借権(債権) | 原則として必要 | 地主に登記義務なし | 住宅地の借地権の多くを占める |
| 地上権(物権) | 不要(自由に売却可能) | 地主に登記義務あり | 地下鉄や送電線下などに多く、住宅地では稀 |
日本の住宅地で設定されている借地権のほとんどは「賃借権」です。賃借権を売却する際には、原則として地主から譲渡の承諾を得なければなりません。
一方の「地上権」は物権であるため、地主の承諾を得ることなく自由に売却や転貸が可能です。
しかし、地主側にとって制約が強い権利であるため、一般の居住用借地として設定されるケースは非常に限られています。
地主に無断で売却・譲渡した場合のリスク
賃借権に該当する借地権を地主に無断で第三者へ譲渡した場合、民法第612条に反する行為となり、契約違反として扱われます。
地主の承諾を得ずに無断譲渡を行うと、地主から借地契約を解除され、建物の収去や土地の明渡しを求められるおそれがあります。
契約が解除されると買主側も土地を利用できなくなるため、実務上、無断での売買は深刻なトラブルに発展します。
借地権の売却を検討する際は、必ず事前に地主との協議や正式な承諾手続きを進めることが大切です。
借地権を売却する4つの主な方法
借地権(または借地権付き建物)を売却する際には、状況や地主との関係性に応じて主に4つの方法が考えられます。
それぞれの特徴や進め方を理解し、適した選択肢を検討することが大切です。
1. 地主に借地権を買い取ってもらう(地主買取)
直接的な方法の一つが、土地の所有者である地主に借地権を買い取ってもらうことです。
地主側にとっても、借地権を買い戻すことで土地の完全な所有権を取り戻せるという利点があります。
第三者への売却と比べて権利関係の調整が地主との間だけで完結しやすく、手続きがスムーズに進む場合があります。
ただし、地主に買い取る意向や資金があるかどうかが前提となります。
2. 第三者へ借地権付き建物を売却する
借地権付き建物のまま、不動産市場を通じて第三者に売却する方法です。
不動産会社に仲介を依頼して一般の買主を探すか、不動産買取業者に直接買い取ってもらう形式が一般的です。
賃借権である場合は地主の承諾が必要となり、譲渡承諾料(名義書換料)の支払いや条件調整を巡って事前の協議が欠かせません。
3. 地主と協力して底地と借地権を同時に売却する
地主と借地人が協力し、借地権と底地(地主の所有権)を一本化して、完全な所有権の土地として第三者に一括売却する方法です。
買い手にとっては通常の土地として購入できるため需要が高まりやすく、借地権単独で売却するよりも有利な条件で成約しやすい傾向があります。
得られた売却代金は、あらかじめ合意した割合に応じて地主と分配します。
4. 地主から底地を買い取って完全な所有地にしてから売却する
借地人が地主から底地を買い取り、自己の完全な所有地とした上で、通常の不動産として第三者に売却する方法です。
借地権の制約がなくなるため市場で売却しやすくなるメリットがありますが、底地を購入するための一時的な資金準備が必要になる点や、地主が底地売却に同意してくれるかどうかがポイントとなります。
| 売却方法 | 主な売却先 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 地主買取 | 地主 | 第三者との交渉が不要で話がまとまりやすい | 地主に資金や買取の意向がないと成立しない |
| 第三者売却 | 一般買主・買取業者 | 市場に向けて広く買い手を募ることができる | 地主の譲渡承諾や譲渡承諾料の支払いが必要 |
| 底地との同時売却 | 一般買主・開発業者など | 完全所有権となるため買い手が付きやすく好条件を狙いやすい | 地主との協力関係および売却割合の合意が必須 |
| 底地買取り後の売却 | 一般買主など | 完全な自己所有地として自由に売却できる | 底地を買い取るための初期資金や地主の同意が必要 |
借地権売却の手続きの流れと発生する費用
借地権(借地権付き建物)の売却は、所有権の不動産売買とは異なり、地主との交渉や各種承諾の取得が手続きの中心となります。
全体の流れと想定される費用をあらかじめ把握しておくことが重要です。
借地権売却の基本的なステップ
借地権の売却は、一般的に以下のような順序で進められます。買主を探す前に地主へ相談し、譲渡についての内諾を得ておくことが円滑な取引につながります。
- 借地契約内容の確認(契約期間、地代、特約条項、残存期間などの把握)
- 不動産会社による査定と売却方針の検討
- 地主への事前相談(売却意向の伝達と承諾の打診)
- 買主の募集と売買条件の交渉
- 地主からの正式な譲渡承諾書の取得(承諾料の取り決め)
- 売買契約の締結および決済・引き渡し
地主への相談を後回しにして買主との契約を先行させると、後から譲渡を拒否されたり高額な承諾料を請求されたりするトラブルに発展しやすいため注意が必要です。
借地権売却に伴い発生する主な費用
借地権の売却時には、通常の不動産仲介手数料や税金に加え、地主へ支払う各種承諾料などの特有の費用が発生します。
| 費用の項目 | 一般的な目安・算出基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 譲渡承諾料(名義書換料) | 借地権価格の約5%〜15%(更地価格の約1%〜5%) | 第三者へ譲渡する際に地主へ支払う承諾料 |
| 建替え(増改築)承諾料 | 更地価格の約3%〜5%程度 | 買主が建替えを前提として購入する場合に発生 |
| 仲介手数料 | (売買価格×3%+6万円)+消費税(上限) | 不動産会社を通じて買主を見つけた場合に発生 |
| 譲渡所得税・住民税 | 売却益(譲渡所得)に対して課税 | 取得費や譲渡費用を差し引いた利益に課税 |
| その他諸費用 | 印紙税、建物解体費(更地渡しの場合)、登記費用など | 取引条件に応じて発生 |
譲渡承諾料(名義書換料)の相場と目安
譲渡承諾料は法律で明確な金額が定められているわけではありませんが、借地権価格の10%前後を目安として協議されるケースが多く見られます。
借地権割合や立地条件、従前の地主との関係性によっても提示される金額が変動することがあります。
買主が建物の建替えを希望している場合は、建替え承諾料や条件変更承諾料(非堅固建物から堅固建物への変更など)が別途求められることもあります。
地主から売却の承諾を得られない場合の対処法
第三者への売却を希望して地主に相談しても、明確な理由なく拒絶されたり、法外な承諾料を要求されたりして合意に至らないケースがあります。
そのような場合でも、直ちに売却を断念しなければならないわけではありません。
裁判所の許可を得る「借地非訟手続き(代諾許可)」
地主が正当な理由なく借地権付き建物の譲渡を承諾しない場合、借地人は裁判所に対して「地主の承諾に代わる許可(代諾許可)」を申し立てることができます。
これは借地借家法第19条に定められている法的な救済制度です。
裁判所は、借地権の残存期間や地代の支払い状況、これまでの契約の経緯、買主の資力や社会的信用などを総合的に審査します。
その結果、借地権の譲渡によっても地主に不利となるおそれがないと認められれば、地主の承諾がなくても売却の許可が下りる仕組みです。
地主が譲渡を拒否している場合であっても、裁判所の代諾許可を得ることで第三者への売却を進められる可能性があります。
借地非訟手続きを利用する際の要件と注意点
借地非訟手続きを利用するには、具体的な買主(譲受人)が決まっており、売買の条件が具体化している必要があります。
買主が決まっていない段階で、あらかじめ裁判所の許可だけを取得しておくことはできません。
また、裁判所から許可が出る場合でも、多くは地主に対する「承諾料相当額の金銭給付」が条件とされます。
さらに、申立てを受けた地主側が「自ら借地権と建物を買い取る」旨の申立て(介入権の行使)を行うことも認められています。
| 項目 | 借地非訟(代諾許可)の主な特徴 |
|---|---|
| 申立ての前提条件 | 具体的な買主(譲受人)および売買条件が決定していること |
| 許可の判断基準 | 買主の資力・信用や、地主に不利となるおそれがないか等を総合考慮 |
| 費用の発生 | 裁判所により地主への承諾料相当額(財産上の給付)の支払いが命じられるのが通例 |
| 地主の対抗手段 | 地主自身が優先して買い取る「介入権」を行使する可能性がある |
法的手続きの前に行うべき事前の話し合い
借地非訟は借地人を保護するための強力な手続きですが、裁判所の手続きを利用すると地主との心理的対立が深まり、関係が悪化しやすい側面があります。
そのため、いきなり申し立てを行うのではなく、まずは地主が売却に難色を示している理由(買主の素性への不安、承諾料の金額など)を丁寧に聞き取ることが大切です。
条件の再提示や誠実な対話を通じて、可能な限り任意の合意を目指す姿勢が重要となります。
まとめ
借地権付き建物は売却が可能ですが、賃借権の場合は地主の承諾や譲渡承諾料の支払いなど、通常の不動産取引とは異なる手続きや調整が必要です。
地主との交渉が難航した場合や承諾が得られない場合には、裁判所による代諾許可(借地非訟)といった法的な手段を検討することも選択肢の一つとなります。
借地権の売却や地主との条件交渉で不安やお悩みがある方は、トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士法人ネクスパート法律事務所へ一度ご相談ください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。