更新日:2026年9月7日 (月)

公開日:2026年9月7日 (月)

【弁護士解説】生成AI利用時の情報管理・証拠保存等の実務対応について~AIと権利シリーズ~

【弁護士解説】生成AI利用時の情報管理・証拠保存等の実務対応について~AIと権利シリーズ~ 【弁護士解説】生成AI利用時の情報管理・証拠保存等の実務対応について~AIと権利シリーズ~

サマリー

AI生成物を社内検討にとどめ、人間が仕上げた成果物を公表する場合、一般消費者への開示は原則として不要ですが、AIの出力と類似していると評価されれば開示が必要になり得ます。未公開資料を扱うなら、入力・出力が既定で学習に利用されない法人向けプランの選択が望ましい対応です。あわせて画像検索の結果や指示文を改変できない形式で保存し、複数当事者が関与する場合の責任分担を契約で定めておくことがポイントになります。

生成AIを制作業務に取り入れる企業では、AI利用の事実をどこまで開示すべきか、情報管理上どのような点に注意すべきか、というご相談をいただくことがあります。結論から述べますと、AI利用の開示範囲は最終成果物の性質によって異なり、情報管理は利用するサービスのプラン選択と密接に関わります。第三者から権利侵害を主張された場合に備え、あらかじめ記録を残しておくことも実務上重要な対応です。

本記事では、AI使用事実の開示範囲、個人向けサービス利用時の情報管理上の注意点、後日の紛争に備えた記録の保存、責任分担の考え方を整理します。

AI使用の事実をどこまで開示する必要があるか

生成AIサービスの利用規約では、AIが生成したものを人が作成したものであると偽って表示することが禁止事項とされている場合があります。そのため、AI生成物をそのまま人間が制作したものとして公表・販売することは、規約違反にあたるおそれがあります。

もっとも、AI生成物が最終成果物そのものではなく、社内検討やイメージ共有の段階にとどまり、最終的に人間が仕上げた成果物を公表する場合は、その成果物自体は人が作り出したものであるため、一般消費者への開示は原則として不要と考えられます。ただし、人間が仕上げた最終成果物が、当初にAIが出力した画像と類似していると評価される場合には、その成果物がAI生成物と同視され、開示が必要になる可能性がある点に注意が必要です。この点を踏まえると、AI生成物はあくまで方向性の検討にとどめ、仕上げの段階では具体的な構図や特徴を言語化して伝えるなど、類似性を低減する工夫をしておくことが望ましいといえます。

個人向けサービスを利用する際の情報管理上の注意点

多くの生成AIサービスでは、法人向けプランについて、既定で入力・出力をモデルの追加学習に使用しない扱いとしています。これに対し、無料版や個人向けの有料プランでは、設定を変更しない限り、入力した内容がモデルの改善に利用されるのが通常です。

未公開の資料や第三者の著作物を個人向けサービスに入力する場合には、次のようなリスクが生じ得ます。入力したデータがモデルの再学習に利用され、他の利用者が同種のプロンプトを入力した際に、意図せず特徴が再現されて流出する可能性があります。また、他者の権利を侵害する態様での利用を禁止する利用規約に抵触するリスクや、素材の提供元が定める利用規約(AIへの読み込みや学習利用を禁止する場合があります)への違反として、民事上のトラブルに発展するリスクも考えられます。加えて、無断で他者の作品をAIに入力したことが判明した場合、創作活動を行う人々からの反発を招く可能性も否定できません。

こうしたリスクを踏まえると、未公開の資料や機密性の高い情報を取り扱う場合は、入力・出力が既定で学習に利用されない法人向けプランを選択することが、情報管理の観点から望ましい対応になります。

後日の紛争に備えた記録の保存

生成AIを用いた制作物について、後日第三者から権利侵害を主張された場合に備え、制作過程の記録を残しておくことが実務上重要です。

具体的には、生成物についての画像検索を実施し、その日時・検索結果・使用したツールや手順を、改変ができない形式で保存しておくことが考えられます。あわせて、AIに入力した指示文の全文、生成された候補画像、採用に至るまでの修正指示や加筆内容、外部の制作者への発注内容についても、時系列で保存しておくことが望ましいといえます。

これらの記録は、第三者から侵害を主張された場面において、既存の著作物を参照せず独自に試行錯誤を行って作成したこと、あるいは人間による創作的寄与があったために自社に著作権が発生していることを示す資料として活用できます。

第三者から権利侵害を主張された場合の責任分担

生成AIサービスの利用規約では、間接的・付随的な損害についてサービス提供企業が責任を負わない旨や、利用者が企業・組織である場合には、利用者側がサービス提供企業に対して費用や損害を補償する義務を負う旨が定められていることがあります。そのため、第三者から権利侵害を主張された場合に、サービス提供企業に直接責任を追及することは難しいのが実情です。

複数の当事者が共同でAI生成物を制作・利用し、その結果として第三者の権利を侵害したと認められる場合には、共同不法行為(民法719条)に該当し、連帯して責任を負う可能性があります。もっとも、共同不法行為が成立するためには、関与した各当事者の行為と結果発生との間に因果関係が必要であるとした裁判例も存在します。

以上を踏まえると、責任の分担は、関係する当事者間の契約によってあらかじめ定めておくことが現実的な対応になります。権利侵害の申立てを受けた場合の一次対応窓口、修正費・回収費・損害賠償金等の負担割合、各当事者が負う表明保証の範囲(第三者の著作物を無断で入力していないこと等)を、契約書上具体的に定めておくことが実務上のポイントです。

まとめ

生成AIの利用にあたっては、AI利用の事実をどこまで開示するかという判断、情報管理の観点からのプラン選択、後日の紛争に備えた記録の保存、そして複数当事者が関与する場合の責任分担という、複数の実務対応を並行して整えておく必要があります。いずれも、トラブルが顕在化してからでは対応が難しくなるため、制作プロセスの設計段階からあらかじめ組み込んでおくことが望ましいと考えられます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

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