更新日:2026年9月7日 (月)

公開日:2026年9月7日 (月)

【弁護士解説】AI生成イラストの商品化で問題となる著作権以外の知財リスクとは?~AIと権利シリーズ~

【弁護士解説】AI生成イラストの商品化で問題となる著作権以外の知財リスクとは?~AIと権利シリーズ~ 【弁護士解説】AI生成イラストの商品化で問題となる著作権以外の知財リスクとは?~AIと権利シリーズ~

サマリー

生成AIで作成したイラストを商品化する場合は、著作権侵害のリスクに加え、商標権・意匠権・不正競争防止法・肖像権など著作権とは独立した権利を検討する必要があります。生成AIサービスの利用規約は権利帰属を定めるにすぎず、第三者の権利侵害がないことまで保証しません。画像検索で類似デザインが出ないことは免責の根拠にならず、商品化前の権利処理とJ-PlatPatでの先行商標調査が実務上のポイントになります。

生成AIで作成したキャラクターやイラストをグッズとして商品化する動きが広がるなかで、著作権以外にどのような法的リスクに注意すべきか、というご相談をいただくことがあります。結論から述べますと、商品化・販売の段階では、著作権侵害のリスクに加え、商標権・意匠権・不正競争防止法・肖像権等、著作権とは独立した複数の権利について検討する必要があります。「画像検索で類似デザインが出てこなければ使用しても問題ない」という考え方は、法的には十分な確認とはいえません。

本記事では、AI生成イラストの商品化段階で問題となる著作権以外の知的財産権と、画像検索による確認の限界を整理します。

商品化段階は著作権侵害リスクが最も顕在化する場面

商品化・販売は、複製・翻案・公衆送信・譲渡といった著作物の「利用」を現実に伴う段階であり、第三者の権利侵害リスクが最も顕在化する場面です。生成AIに第三者のイラストを参考画像として入力して生成している場合、その時点で依拠性が認められる可能性が高いため、商品化はその侵害を販売という形で拡大・固定する行為になりやすいといえます。

AI生成物が第三者の既存著作物と創作的表現において共通し、依拠性も認められる場合には著作権侵害となります。この判断基準そのものは、通常の著作権侵害の場合と変わりません。

著作権以外に注意すべき知的財産権

商品化の場面では、著作権とは別に、次のような権利にも留意が必要です。

グッズのブランド名やロゴ、キャラクター名が第三者の登録商標と同一・類似であり、指定商品・役務が重なる場合には、商標権侵害となり得ます。物品のデザインについては、意匠権の問題も別途生じることがあります。これらは著作権とは独立した権利であるため、著作権侵害が認められない場合であっても、商標権や意匠権の侵害が問題になることがあります。

また、他人の周知・著名な商品等表示と混同を生じさせるような態様での使用は、不正競争防止法上の問題となる可能性があります。実在の人物や著名人を想起させるデザインの場合には、肖像権やパブリシティ権の問題が生じることもあります。

生成AIサービスの利用規約上の制約

生成AIサービスの利用規約においても、確認しておくべき点があります。多くのサービスでは、出力(アウトプット)についてユーザーが権利を保持する旨、およびサービス提供企業が有する権利があればそれをユーザーに譲渡する旨が定められており、生成物の商用利用自体を一律に禁止する条項は設けられていないのが通常です。

もっとも、この規定はあくまでサービス提供企業とユーザーの間での権利帰属を定めるものにすぎず、生成物が第三者の権利を侵害していないことまで保証するものではありません。また、そもそも生成物に著作物性がなく権利が発生していない場合には、譲渡される権利自体が存在しないことになります。

利用規約上、他者の権利を侵害する態様での利用や、生成物を人が作成したものと偽って表示することは禁止事項とされているのが一般的です。加えて、無料版や個人向けプランでは、入力・出力が既定でモデルの改善に利用される場合があり、第三者から著作権侵害の申立てを受けた際にサービス提供企業が防御・費用負担を行う補償制度についても、法人向けプランに限定されていることが多い点に留意が必要です。商品化を前提とする場合は、こうした利用規約や補償制度の適用範囲をあらかじめ確認しておくことが望ましいと考えられます。

「検索で類似デザインが出なければ問題ない」という認識の当否

「画像検索で類似デザインが出てこなければ使用しても問題ない」という認識は、法的には妥当とはいえません。

著作権侵害は「類似性」と「依拠性」という2つの要件で判断されるものであり、画像検索の結果は、あくまで類似物の存否を確認する一手段にすぎません。画像検索はウェブ上でインデックスされた画像しか捕捉できないため、検索で見つからないことをもって、既存の著作物が存在しないと判断することはできません。

また、第三者のイラストを参照・入力して生成している場合、利用者がその著作物を認識していることは明白であるため、依拠性はすでに認められる可能性が高く、検索結果の有無によって左右されるものではありません。商標権や意匠権、肖像権・パブリシティ権等についても、一般的な画像検索では確認できず、商標については特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)等での別途の調査が必要になります。

もっとも、生成物について画像検索を行い、その結果を日時や手順とともに保存しておくこと自体は、独自に制作したことを裏付ける記録として一定の意義があります。画像検索は、必要な確認作業の一部を構成するものではあっても、それだけで「問題ない」と結論づけ、免責の根拠とすることはできない、という位置づけで理解しておく必要があります。

商品化前に必要な許諾・調査の実務対応

第三者の著作物を参照・利用している場合には、権利者から入力・生成・利用の各段階について許諾を得ておく必要があります。制作者が関与する場合は、著作権(著作権法27条・28条を含む)の譲渡や著作者人格権の不行使、改変・商品化・商標出願等の用途を可能にする条項を契約で整備しておくことが求められます。

キャラクター名やロゴをブランドとして展開する場合は、J-PlatPatによる先行商標調査を行ったうえで、区分の選定を含めて弁理士へ相談することが実務上の対応になります。また、グッズを一般消費者向けに販売する場合は、販売態様に応じて特定商取引法上の表記義務や、景品表示法上の表示規制(優良誤認・有利誤認等)の対象となることがあるため、あわせて確認が必要です。

まとめ

生成AIで作成したイラストを商品化・販売する場合は、著作権侵害のリスクに加えて、商標権・意匠権・不正競争防止法・肖像権等、著作権とは独立した複数の権利を検討する必要があります。画像検索による確認は独自制作を裏付ける記録として一定の意義を持ちますが、それ単独で法的リスクがないと判断することはできません。商品化前に権利処理と各種調査を行っておくことが、後日のトラブルを避けるための実務上の対応になります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

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