更新日:2026年9月7日 (月)
公開日:2026年9月7日 (月)
【弁護士解説】AI生成物の著作権帰属と契約書の権利処理・人格権不行使について~AIと権利シリーズ~
サマリー
AI生成物に著作権が成立するかは人間の創作的寄与の程度によって決まるため、成立する場合と成立しない場合の双方を想定した契約設計が必要になります。取引先や制作者から著作権を譲り受けるときは、著作権法27条・28条の権利を特掲しなければ譲渡人に留保されたと推定されます。あわせて著作者人格権の不行使条項を設け、改変や商品化、海外利用といった将来の用途も契約書に明記しておくことが実務上のポイントです。
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生成AIを制作プロセスの一部に組み込み、最終的な成果物を取引先や社外の制作者との間でやり取りする企業が増えています。この場合、AI生成物や、それをもとに人間が仕上げた最終成果物について、契約書上どのように著作権を処理すればよいか、というご相談をいただくことがあります。結論から述べますと、AI生成物の著作権が成立するかどうかは人間の創作的関与の程度によって左右されるため、著作権が成立する場合と成立しない場合の両方を想定した契約設計をしておくことが実務上望ましいと考えられます。
本記事では、AI生成物に著作権が成立する範囲の考え方と、契約書に盛り込むべき権利処理条項の要点を整理します。
AI生成物に著作権が成立する範囲
AIが生成した画像に著作権が発生するかどうかは、人間による「創作的寄与」が認められるかどうかで判断されます。単純な指示によってAIに画像を出力させただけの場合は、創作的寄与が否定され、著作権が発生しないと判断される可能性が高いと考えられています。
これに対し、具体的な構図や色彩を指示し、生成物を確認しながら修正を重ね、工夫を伴う選択を経て仕上げた場合や、生成後に人間が表現上の加筆・修正を加えた場合には、創作的寄与が認められ、著作権が発生する余地があります。この判断は個別の事案ごとに行われるため、一定の試行錯誤を経たからといって、確実に著作権が認められるとは限りません。著作物性が認められない場合、その画像には著作権法上の独占的保護が及ばず、第三者が同一の画像を無断で使用しても、著作権侵害を理由とする差止めや損害賠償請求はできなくなる点にも留意が必要です。
元となる素材を自社で作成している場合の職務著作
AIへの入力に用いる素材を自社の社員が作成している場合、その素材自体には著作権が成立します。この著作権は、次の職務著作の要件をすべて満たせば、社員個人ではなく所属する企業に帰属します。
著作権法15条1項(職務上作成する著作物の著作者)
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
要件を確実に満たすためには、就業規則や社内規程において、業務上作成した著作物の著作権が企業に帰属する旨を明文化しておくことが重要になります。なお、この職務著作はあくまで社員が作成した元の素材についてのものであり、AIが生成した画像そのものの著作権を意味するものではない点に注意が必要です。
著作権法27条・28条を含めた譲渡条項の必要性
最終成果物やその元となる素材の著作権を取引先や制作者から譲り受ける場合、契約書には著作権法27条(翻案権等)および28条(二次的著作物の利用に関する権利)を含む譲渡条項を明記する必要があります。
著作権法61条2項
著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
この規定により、単に「著作権を譲渡する」とだけ記載した場合、改変やキャラクターの派生利用に不可欠な翻案権等は譲渡人に留保されたものと推定されてしまいます。「著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を譲渡する」という形で、対象となる権利を個別に明記しておくことが実務上の対応になります。
著作者人格権の不行使条項
著作者人格権(同一性保持権や公表権など)は著作者本人に一身専属するものであり、第三者に譲渡することはできません。
著作権法59条(著作者人格権の一身専属性)
著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
そのため、著作権を買い取った後も、著作者本人には著作者人格権が残り続けます。この状態のままでは、著作権を取得した企業が画像の改変やロゴ・パッケージへの利用等を行う際に、著作者人格権を理由とした異議を受ける可能性が残ります。これを避けるため、著作権の譲渡契約とあわせて、著作者本人が著作者人格権を行使しない旨の条項を設けておくことが必要になります。職務著作が成立している場合は法人が著作者となるため、法人側が人格権不行使を確約する条項を設ける形になります。
将来の改変・商品化・商標出願・動画化・海外利用を見据えた契約設計
将来的に画像やキャラクターの改変、商品化、動画化、海外展開などを行う可能性がある場合は、譲渡条項や人格権不行使条項に加えて、想定される用途をあらかじめ契約書に明記しておくことが望ましいと考えられます。
改変や商品化については、翻案権の譲渡と人格権の不行使が整っていても、同一性保持権との関係を踏まえ、ポーズや色の変更等の改変について著作者が包括的に同意する旨を明記しておくと、後の紛争を避けやすくなります。商標としての出願・登録を予定する場合は、その同意と出願権限の所在を明記する必要があります。また、静止画から動画への展開に伴い新たな制作物が生じる場合の権利帰属についても、あわせて確認しておくことが考えられます。地域的な利用範囲についても、「全世界」と明記しない場合、日本国内に限定されたと解釈される余地が残る点に注意が必要です。
まとめ
AI生成物の著作権処理は、著作権が成立するかどうかという入口の判断と、成立した場合・しない場合それぞれに応じた契約条項の設計という、二段階で検討する必要があります。職務著作の要件整備、著作権法27条・28条を含む譲渡条項の特掲、著作者人格権の不行使、将来の用途拡張を見据えた条項の明記は、いずれも欠けると後日の紛争につながりやすい実務上のポイントです。
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※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。