更新日:2026年9月7日 (月)

公開日:2026年9月7日 (月)

【弁護士解説】生成AIに参考画像を入力する際の著作権侵害リスクと判断基準とは?~AIと権利シリーズ~

【弁護士解説】生成AIに参考画像を入力する際の著作権侵害リスクと判断基準とは?~AIと権利シリーズ~ 【弁護士解説】生成AIに参考画像を入力する際の著作権侵害リスクと判断基準とは?~AIと権利シリーズ~

サマリー

他人のイラストを参考画像として生成AIに入力する行為は、情報解析のためであれば著作権法30条の4により原則として許諾は不要ですが、入力画像に似た生成物を作らせる目的がある場合は同条が適用されず、許諾が必要になります。生成・利用段階は類似性と依拠性で判断され、画風のみの模倣は侵害になりませんが、キャラクターの造形や構図まで再現すると侵害となるおそれがあります。

画像生成AIを制作実務に取り入れる企業が増えるなかで、既存のイラストや写真を参考画像としてAIに読み込ませ、それをもとに画像を生成する場面についてのご相談をいただくことがあります。結論から述べますと、著作権者の許諾を得ずに第三者のイラストをそのまま参考画像としてAIに入力する行為は、原則として控える必要があります。

本記事では、生成AIの利用行為をどのような段階に分けて検討するか、著作権侵害の判断基準となる「類似性」と「依拠性」の考え方、画風の模倣とキャラクターの再現とで法的評価が異なる点を整理します。

生成AIの利用行為を「入力」「生成」「利用」の3段階で捉える

生成AIと著作権の関係を整理する際は、まずAIの開発・学習段階と、実際に画像を生成して利用する段階とを区別する必要があります。著作物を学習用データとして収集しAIを訓練する過程は、知的・精神的欲求を満たす効用を得る目的のない利用(非享受目的)にあたる場合、著作権法30条の4により、原則として著作権者の許諾なく行うことができるとされています。

著作権法30条の4(柱書)

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

一方、既存のイラストを参考画像として入力し、画像を生成させ、生成された画像を利用する場面は、AIの開発・学習とは別の「生成・利用段階」に位置づけられ、通常の著作権侵害と同様の判断基準が適用されます。この段階はさらに、参考画像をAIに読み込ませる「入力」行為、AIが画像を出力する「生成」行為、出力された画像を実際に使用する「利用」行為に分けて考える必要があります。

AI画像生成で参考画像を入力するとき、著作権との関係はどうなるのか。

画像生成AIで、手元にある既存の画像を「こんな感じで作って」と読み込ませる使い方があります。Image to Imageと呼ばれる方法です。このとき、他人の画像を入力する行為そのものが著作権侵害になるのか、気になる人は多いはずです。

文化庁が令和6年7月31日に公表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、この点について整理をしています。

結論から言うと、画像を入力する行為が、それだけで直ちに複製権侵害になるわけではありません。ポイントは、何のために入力したかです。

著作権法には30条の4という規定があります。作品を「楽しむ」ためではなく、データとして解析するために使う場合には、権利者の許可なく利用できるという趣旨のルールです。AIに画像を読み込ませる作業は、通常はその画像を解析して生成の指示に変える処理です。作品として鑑賞するわけではないので、原則としてこの30条の4が当てはまり、入力自体は許可なく行えます。

ただし例外があります。入力した画像とそっくりな画像をAIに作らせる目的で読み込ませた場合です。この場合は「解析のため」という説明では済まず、元の作品を楽しむ(享受する)目的も一緒にあると評価されます。すると30条の4は使えなくなり、権利者の許可が必要になります(ガイダンス3-1-3)。つまり、入力という同じ行為でも、似せるつもりがなく、あくまで解析目的なら許可は不要、元画像に似たものを作らせる目的なら許可が必要というように、目的によって扱いが分かれます。入力段階を一律に「複製だから侵害」と考えるのではなく、目的で線を引くのが文化庁の整理です。

もう一つ注意しておきたいのは、入力段階がセーフでも安心とは限らない点です。実際に出てきた画像が既存の作品とよく似ていて、かつその作品を元にして作られたと言える場合には、その画像を作って世に出す段階や使う段階で、別途著作権侵害になることがあります。入り口(入力)と出口(生成・利用)は、それぞれ別に判断されます。

著作権侵害の判断基準となる「類似性」と「依拠性」

生成された画像の出力とその利用についても、著作権侵害が成立するかどうかは「類似性」と「依拠性」という2つの要件で判断されます。なお、既存の著作物をそのまま参考画像として入力する行為は、同一の著作物を用いている以上、当然に類似性の要件を満たします。

生成された画像についての類似性は、既存の著作物の創作的表現、すなわち個性が表れている部分が共通しているかどうかで判断されます。表現上の本質的な特徴を直接感得できる場合に類似性が認められるとした判例(最判平成13年6月28日民集55巻4号837頁・江差追分事件)の考え方が、この判断の基礎になっています。ありふれた表現や抽象的なモチーフが共通するにとどまる場合は、アイデアの共通にすぎず、類似性は否定されます。

依拠性については、AIの利用者が既存の著作物を認識した状態で、それに類似する生成物を出力させた場合に認められるのが通常です。既存のイラストを参考画像として直接入力する行為は、そのイラストを認識していることが明白であるため、依拠性を認める間接事実になります。

画風の模倣とキャラクターの再現は法的評価が異なる

既存の作品の画風、すなわち線の雰囲気や配色、タッチといった要素は、著作権法上の「表現」ではなく「アイデア」に分類されるため、著作権の保護対象には含まれません。既存の著作物から画風や作風のみを抽出させる目的での利用は、権利者の許諾を得ずに行うことができると考えられています。

たとえば、特定のスタジオの画風を指して抽象的に生成を指示する場合、これは画風というアイデアの利用にとどまるため、原則として著作権侵害にはなりません。他方で、既存の著作物に登場する具体的なキャラクターの図柄そのものを出力させることを目的として指示した場合、生成された画像がそのキャラクターの図柄の創作的表現と共通していれば、著作権侵害に該当すると考えられます。同じ「既存作品を参考にする」行為であっても、抽象的な画風にとどまるか、具体的な造形や構図まで再現するかによって、法的な評価は大きく異なります。

参考画像を使わず、文章で指示する方法によるリスク低減

参考画像を直接入力する代わりに、画風の特徴を文章で抽象化してプロンプトに入力する方法は、著作権侵害のリスクを下げるうえで有効な手法と考えられます。線の太さや配色傾向、全体の雰囲気といった画風の特徴はアイデアに該当するため、これを言語化して指示すること自体は問題になりにくいためです。

ただし、文章による指示であっても、参考にした作品の具体的な構図や特徴的なポーズ、モチーフの配置などを細かく言語化して入力した場合には、出力された画像に既存の著作物の創作的表現が再現されてしまう可能性が高まります。この場合、画像を直接入力していなくても、既存の著作物を認識したうえで言語化している以上、依拠性が認められ、類似性も満たされれば著作権侵害となるおそれがあります。プロンプトを作成する際は、具体的な構図の再現を避け、抽象的な画風やテーマの指定にとどめることが実務上のポイントになります。

まとめ

入力段階では、入力に伴う複製等に著作権法30条の4が適用されるか(類似生成物の生成を目的とする享受目的が併存していないか)を確認し、生成・利用段階では、類似性と依拠性の両方が満たされるかを確認することになります。画風や作風といった抽象的な要素を参考にすること自体は著作権侵害にあたりませんが、具体的なキャラクターの造形や構図といった創作的表現まで再現された場合は、著作権侵害と評価されるおそれがあります。文章による指示に切り替えることでリスクを下げることはできますが、具体的な描写を細かく指定すれば同様の問題が生じうる点に留意が必要です。

企業法務に強い弁護士が在籍するネクスパート法律事務所にご相談ください。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

関連記事を見る

会社法改正の中間試案を解説|株主総会と株式発行の見直し8項目

2026.09.10

企業法務

会社法改正の中間試案を解説|株主総会と株式発行の見直し8項目

資金調達で弁護士に相談すべき理由とは?契約・手続きの注意点

2025.08.07

資金調達で弁護士に相談すべき理由とは?契約・手続きの注意点

下請法改正(取適法)の従業員基準とは?適用要件と企業対応

2025.08.15

下請法改正(取適法)の従業員基準とは?適用要件と企業対応

周知表示混同惹起行為とは?成立要件や違反時のリスクを解説

2025.08.18

不正競争防止法

周知表示混同惹起行為とは?成立要件や違反時のリスクを解説

企業法務を弁護士に依頼するメリットとは?業務内容や費用相場を解説

2021.05.17

顧問弁護士

企業法務を弁護士に依頼するメリットとは?業務内容や費用相場を解説

PREV
NEXT