更新日:2026年8月28日 (金)

公開日:2026年8月28日 (金)

取適法の情報成果物とは?対象となる取引と具体例を解説

取適法の情報成果物とは?対象となる取引と具体例を解説 取適法の情報成果物とは?対象となる取引と具体例を解説

サマリー

令和8年1月1日に施行された取適法では、対象となる取引の一つに「情報成果物作成委託」があります。情報成果物はプログラム、映画・放送番組その他影像や音響で構成されるもの、文字・図形・記号やこれらと色彩の結合で構成されるものなどで、提供目的・請負作成目的・自家使用目的の3類型に分かれます。該非判定の具体例を解説します。

製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称「中小受託取引適正化法」、通称「取適法」といいます。)は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正して題名を変更したもので、令和7年5月23日に公布され、令和8年1月1日から施行されています(改正法は令和7年法律第41号)。従来の下請法から規制が強化および明確化されました。対象となる取引の一つに「情報成果物作成委託」がありますが、ソフトウェア、デザイン、コンテンツ制作など多岐にわたるため、自社の発注業務が該当するかどうか判断に迷うケースが少なくありません。本記事では、取適法における情報成果物の定義や類型、具体的な該当例について詳しく解説します。

取適法における「情報成果物」の定義と作成委託の3類型

情報成果物とは、次に掲げるものをいいます(取適法2条7項)。

製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律2条7項

一 プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)

二 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの

三 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの

四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの

身近な例を当てはめると、1号がゲームソフト・会計ソフト・制御プログラム、2号がテレビ番組・CM・アニメ、3号が設計図・デザイン・レポートなどに当たります。

これらの作成を他社に委託することが「情報成果物作成委託」です(取適法2条3項)。発注の目的などに応じて、次の3つの類型に分けられます。

提供目的の情報成果物の作成委託(類型1)

自社が他者に提供(販売や使用許諾など)する情報成果物の作成を、他の事業者に委託するケースです。たとえば、ゲームメーカーが販売用ゲームソフトの作成を外注することや、家電メーカーが製品に内蔵する制御プログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託することなどが該当します。

請負作成目的の情報成果物の作成委託(類型2)

他者から作成を請け負った情報成果物の作成の一部または全部を、さらに別の事業者に委託(再委託)するケースです。広告会社が請け負ったテレビCMの制作を広告制作会社に委託することや、システム開発会社が請け負ったシステム開発の一部を別の会社に委託することなどが挙げられます。

自家使用の情報成果物の作成委託(類型3)

自社で使用する情報成果物の作成を、自社内で業として(反復継続的に)行っている場合に、その作成の一部または全部を外部に委託するケースです。社内にシステム部門があり、自社用の会計ソフトウェアを日常的に開発している企業が、その一部の開発を外部に委託する場合などが当てはまります。

公式テキストからみる情報成果物作成委託の具体例

公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)が示している、実務上判断に迷いやすい具体的なケースを紹介します。

翻訳業務やシステム開発支援の扱い

海外で販売しているゲームソフトを国内向けに販売するために、ゲーム内で使用されている言語を日本語に翻訳する業務を外注する場合、翻訳文書は情報成果物であり、かつ最終的な情報成果物であるゲームソフトを構成する情報成果物であるため、情報成果物作成委託(類型1)に該当します(同テキストQ25)。また、特定の成果物の完成を目的とせず、発注者の社内に常駐してコーディング作業等を行う「システム開発支援業務」であっても、コーディング作業はソフトウェアの作成行為そのものであるため、情報成果物作成委託として扱われます(同Q29)。

著作権などの知的財産権が関係する場合

放送番組に使用する脚本やテーマ曲の楽譜について、脚本家や作曲家が著作権を持つ場合であっても、番組を構成する情報成果物であるため、その作成を委託することは情報成果物作成委託となります。同テキストQ26は、著作権の帰属先のいかんを問わず該当するとしています。

なお、委託事業者が作成の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を無償で譲渡・許諾させることは、不当な経済上の利益の提供要請の禁止(取適法5条2項2号)に触れ、取適法違反となるおそれがあるため注意が必要です。

取適法の対象外(非該当)となるケースと注意点

一方で、情報成果物に関連する取引であっても、取適法の対象外となるケースがあります。

既存のパッケージソフトの購入

すでに完成して一般に販売されているパッケージソフトをそのまま購入する取引は、仕様や内容を指定して作成を依頼しているわけではないため、情報成果物作成委託には該当しません。ただし、購入するソフトの一部を自社向けに仕様変更させる場合は委託に該当することがあります。

自社で作成能力のない業務の外注

自社のホームページ作成や社内システムの開発について、社内に専門の部門がなく、自ら作成することを業としていない企業が外部に依頼するケースは、自家使用目的(類型3)における「業として行う」要件を満たさないため、原則として対象外となります。

同テキストQ28は、社内のシステム開発部門で作成している場合であっても、外注する部分を自社で作成する能力がないようなときは、その外注部分の作成を自社で業として行っているとは認められないとしています。逆に、自社が日頃自ら作成している部分を外注する場合は類型3に該当します。

ディレクターの指示どおりに行う単純作業

外注先の担当者が発注元の事業所に出向き、発注元のディレクターから具体的な指示を受けながら単純な作業のみを行う場合は、情報成果物の作成委託ではなく役務(サービス)の提供とみなされます。自社で用いる役務の委託は取適法の対象外となる扱いを受けます(同Q27)。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

取適法における情報成果物作成委託の該非判定について整理しました。

  • 情報成果物はプログラム、映像・音響、文字・図形などに分類され、これらに類するもので政令で定めるものも含まれます
  • 提供目的、請負目的、自家使用目的の3つの類型が存在します
  • 自社で反復継続的に作成していない社内用システムの開発委託などは対象外となる場合があります

自社の取引が取適法の対象となるかどうかの判断は複雑なケースも多く、誤った運用は法令違反につながるリスクが想定されます。

ネクスパート法律事務所では、企業の法律問題に関するご相談を承っております。取適法(旧下請法)に基づく取引類型の該非判定、新法に対応した契約書・発注書面のリーガルチェック、社内コンプライアンス体制構築のサポートなども承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

中小受託取引適正化法(取適法)関係(公正取引委員会)および中小受託取引適正化法テキストも併せてご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

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