住宅ローンの巻き戻しとは?マイホームを維持して個人再生する方法 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

住宅ローンの巻き戻しとは?マイホームを維持して個人再生する方法

住宅ローンの巻き戻しとは、保証会社による代位弁済をなかったものとみなす制度です。

民事再生法が規定する住宅資金貸付債権に関する特則において、保証会社の代位弁済日から6か月以内に個人再生を申立てた場合に限り、巻き戻しが認められています。

住宅資金特別条項を定めた再生計画案が裁判所に認可されれば、代位弁済ははじめからなかったものとみなされるため、住宅を手放さずに住宅ローン以外の借金を減額できます。

この記事では、住宅ローンの巻き戻しについて、次のとおり解説します。

  • 住宅ローンの巻き戻しとは?
  • 住宅ローンの巻き戻しの要件
  • 住宅ローンの巻き戻しにより利用できる個人再生の住宅資金特別条項とは
  • 住宅ローン巻き戻し制度を利用する際の注意点
  • アンダーローンの場合は清算価値が跳ね上がるため注意が必要

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住宅ローンの巻き戻しとは?

ここでは、住宅ローンの巻き戻しとその効果について解説します。

住宅ローンを代位弁済前の状態に戻す制度

住宅ローンの巻き戻しとは、保証会社による代位弁済をなかったものとみなす制度です。

代位弁済とは、保証会社が、住宅ローンを長期滞納している債務者に代わって住宅ローンの残額および利息を金融機関に一括返済することです。

この代位弁済を受けると、住宅資金特別条項を利用できないのが原則です(民事再生法198条1項)。住宅資金特別条項を利用できなければ、住宅を残したまま住宅ローン以外の借金を減額できません。

個人再生を利用する方の多くは、住宅ローンの滞納が生じています。保証会社の代位弁済後は住宅資金特別条項を利用できないとなると、住宅資金特別条項を利用できるケースが限定されてしまいます。

これでは、債務者の自宅を維持して経済的更生を図ろうとした住宅資金特別条項の制度の趣旨を十分に達成できません。

そこで、代位弁済から6か月を経過する日までに個人再生を申立てた場合は、例外的に住宅資金特別条項を利用できるとされています(民事再生法198条2条)。これを住宅ローンの巻き戻しといいます。

住宅ローンの巻き戻しの効果

代位弁済から6か月以内に個人再生を申立てて、住宅資金特別条項を含めた再生計画が認可されると、保証会社が代位弁済した保証債務の履行はなかったものとみなされます。具体的には、次のような法律効果を生みます。

  • 保証会社の求償権が消滅し、保証債務が復活する
  • 住宅ローンの債権が金融機関に戻る

自宅を手放さずに住宅ローン以外の借金を減額できる

住宅資金特別条項を定めた再生計画案が裁判所に認可されれば、住宅ローンの巻き戻し効果が生じ、自宅を手放さずに個人再生で住宅ローン以外の借金を減額できます。

住宅ローンの巻き戻しの要件

ここでは、住宅ローンの巻き戻しの要件について解説します。

住宅ローンの巻き戻しが認められるためには、次の要件を満たさなければなりません。

  • 保証会社が代位弁済していること
  • 代位弁済後6か月以内に個人再生を申立てていること

ひとつずつ説明します。

保証会社が代位弁済していること

住宅ローンの巻き戻しが認められるのは、保証会社が代位弁済した場合に限られます。

家族や親戚等の保証人が保証債務を履行した場合は、住宅ローンの巻き戻しが認められません。

代位弁済後6か月以内に個人再生を申立てていること

住宅ローンの巻き戻しが認められるためには、保証会社が代位弁済を行った日から6か月を経過する日までに、個人再生を申立てなければなりません。

1日でも過ぎると巻き戻しが認められないため、保証会社の代位弁済日を正確に把握する必要があります。

住宅ローンの巻き戻しにより利用できる個人再生の住宅資金特別条項とは

ここでは、個人再生の住宅資金特別条項について解説します。

住宅資金特別条項とは

住宅資金特別条項とは、住宅ローンの元本、利息、遅延損害金を含めた全額の支払方法を変更(返済の繰り延べ、リスケジュール)する再生計画の条項です。

住宅資金特別条項を定めた再生計画案が認可されれば、住宅ローンの支払いを継続して自宅を守り、住宅ローン以外の借金だけを個人再生で減額できます。

住宅資金特別条項が利用できる条件

住宅資金特別条項を利用するためには、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 債務者が所有する住宅で床面積の2分の1以上の部分が自己の居住のためにあること
  • 住宅資金特別条項の対象となる債権が住宅資金貸付債権であること
  • 住宅資金貸付債権が法定代位により取得されたものでないこと
  • 住宅に他の債務を担保する抵当権が設定されていないこと
  • 住宅の共同担保となっている不動産に別の担保権が後順位に設定されていないこと
  • 保証会社の代位弁済から6か月以内に個人再生を申立てていること

ひとつずつ説明します。

債務者が所有する住宅で床面積の2分の1以上の部分が自己の居住のためにあること

住宅資金特別条項の対象となる住宅は、次の条件を満たす建物でなければなりません。

  • 個人である債務者が所有(共有も含む)している建物
  • 自己の居住のために所有した建物
  • 床面積の2分の1以上に相当する部分が自己の居住のためにあること

したがって、次のいずれかに該当する場合は、住宅資金特別条項が利用できません。

  • 現実に居住していない建物
  • 賃貸している建物
  • 床面積の2分の1以上に相当する部分を事業用に使用している場合

住宅資金特別条項の対象となる債権が住宅資金貸付債権であること

住宅資金特別条項の対象となる住宅ローン債権は、以下の要件を満たす債権でなければなりません。

  • 住宅の建設、購入、改良に必要な資金としての貸し付けであること
  • 分割払いの定めがある債権であること
  • 当該債権または求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されていること

住宅資金貸付債権が法定代位により取得されたものでないこと

住宅ローン債権について、法定代位が生じている場合は、原則として住宅資金特別条項を利用できません。

保証会社による代位弁済については一定の条件を満たせば巻き戻しが認められますが、一般の個人にまで住宅資金特別条項の適用を認めると、代位弁済した人に経済的負担を与えることになるからです。

住宅に他の債務を担保する抵当権が設定されていないこと

住宅資金特別条項を利用するためには、対象とする住宅に住宅ローン以外の債務を担保する抵当権が設定されていないことが必要です。

例えば、次のようなローンの抵当権が設定されている場合は、住宅資金特別条項を利用できません。

  • 事業者ローン
  • 消費者金融の不動産担保ローン
  • 借り換えローン

住宅の共同担保となっている不動産に別の担保権が後順位に設定されていないこと

住宅以外の所有不動産(別荘等)に住宅ローン債権にかかる共同抵当権が設定されている場合で、その不動産に住宅ローン以外の後順位抵当権が設定されているときは、住宅資金特別条項を利用できません。

住宅資金特別条項は、住宅に設定された抵当権にしか効力が及びません。他の不動産に設定された後順位抵当権者が、代位によって住宅に設定された抵当権を取得した場合、後順位抵当権者は、住宅に設定された抵当権を自由に実行できるため、住宅資金条項が無意味になるからです。

保証会社の代位弁済から6か月以内に個人再生を申立てていること

保証会社が住宅ローンを代位弁済した場合は、代位弁済日から6か月以内に個人再生を申立てた場合に限り、住宅資金特別条項を利用できます。

個人再生の申立てが、代位弁済日から6か月を過ぎている場合は、住宅資金特別条項が利用できません。

なお、住宅資金特別条項を定める場合は、個人再生の申立時に、申立書または債権者一覧表に住宅資金特別条項を定める予定の意思を記載する必要があります。

住宅ローンの巻き戻し制度を利用する際の注意点

ここでは、住宅ローンの巻き戻し制度を利用する際の注意点について解説します。

自宅の競売手続きが開始されている場合は中止命令の申立てが必要

保証会社による代位弁済後、すぐに抵当権が実行され、競売手続きが開始するケースもあります。一般の再生債権者による強制執行は、再生手続きの開始により中止されますが、住宅ローン債権の抵当権の実行として競売が開始された場合は、再生手続きが開始しても中止されません。

再生計画の認可決定確定による巻き戻し効果が出る前に、競売手続きが進んで競落されると、住宅資金特別条項を利用する意味がありません。

このため、個人再生の申立てと同時に中止命令を申立て、再生手続開始決定後、裁判所から抵当権実行の中止命令を発令してもらう必要があります。中止命令が出たら、その命令謄本を、競売手続きを進めている執行裁判所に提出することで、競売を停止できます。

住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可決定が確定すれば、認可決定正本を執行裁判所に提出することで競売が取り消されます。

住宅資金特別条項を利用するためには住宅ローン債権者との事前協議が必要

住宅ローンの巻き戻しに債権者の同意は必要ありませんが、住宅資金特別条項を利用するためには、住宅ローン債権者との事前協議が必要です。

事前協議は、概ね以下の手順で進められます。

  • 債務者が住宅ローン債権者に収入明細や債務の全容が分かる資料を提出する
  • 債務者が住宅ローンを除く借金に関する返済の見通しを住宅ローン債権者に説明する
  • 住宅ローン債権者が住宅ローンへの弁済可能額を算出する
  • 住宅ローン債権者が債務者と相談しながらいくつかのリスケ案を作成する
  • 住宅ローン債権者の概ねの同意を得てから債務者は個人再生を申立てる

保証会社に返済していた場合の取扱い

保証会社による代位弁済後、債務者が保証会社に返済した場合の返済金は、巻き戻しまでの間に保証会社から元の債権者に交付する方法で、住宅ローンの返済として充当されます。

保証人が保証会社に返済した場合は住宅ローンの返済として充当されないため、保証会社は保証人に対してその金額を返還します。

アンダーローンの場合は清算価値が跳ね上がるため注意が必要

住宅ローンの残債よりも住宅の時価評価額が高くなることをアンダーローンといいます。

アンダーローンでも住宅資金特別条項を利用できますが、住宅の評価額によっては再生計画に基づく弁済総額が跳ね上がる可能性があります。

例えば、住宅ローン以外の借金の総額が400万円の場合、基準債権額による最低弁済額は100万円です。この債務者が住宅を所有し、住宅資金特別条項を利用するとします。住宅ローン債務が1,200万円で、住宅の時価評価額が1,600万円である場合、差額の400万円が債務者の資産とみなされるため、最終的な弁済総額は400万円以上となります。

このような場合は、結果的に借金が減額されないため、個人再生する意味もなくなってしまいます。住宅の維持については、再検討する必要があります。

まとめ

個人再生における住宅資金特別条項は、自宅を残したまま住宅ローン以外の借金の減額できる制度です。

保証会社による代位弁済をなかったものとみなす住宅ローンの巻き戻し制度は、住宅資金特別条項を利用するための例外的な制度です。保証会社の代位弁済日から6か月が経過している場合は、巻き戻し制度が利用できません。

期限までに個人再生の申立てが裁判所に受理されている必要があるため、住宅ローンの滞納が生じている場合は、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

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