自己破産すると仕事はどうなる?仕事の制限・給料・仕事道具への影響
「自己破産すると会社にバレる?」
「自己破産で会社をクビになることはある?」
自己破産を検討中の方は、リスクを避けるために、あらかじめ仕事への影響を把握することが大切です。
この記事では、自己破産と仕事の関係について、次のとおり解説します。
- 自己破産すると仕事はどうなる?影響が出る?
- 自己破産により制限される仕事とは?
- 自己破産すると仕事道具も没収される?
- 仕事している人が自己破産すると給料・ボーナス・退職金はどうなる?
- 自己破産は仕事先にバレる?
自己破産を検討中の方で、仕事への影響が気になる方はぜひご参考になさってください。
目次
自己破産すると仕事はどうなる?影響が出る?
自己破産すると仕事はどうなるのでしょうか。何らかの影響が出るのでしょうか。
ここでは、自己破産の仕事への影響について解説します。
自己破産は基本的には仕事に影響しない
一般の会社員であれば、仕事に影響が出ることはほとんどありません。自己破産したことが会社に知られることも基本的にはないでしょう。
自己破産を理由に解雇されることはない
何らかの理由で自己破産したことが会社にバレても、自己破産を理由として解雇されることはありません。自己破産は、法律上解雇事由とならないので、仮に自己破産を理由に解雇された場合は不当解雇にあたります。
自己破産により制限される仕事とは?
自己破産では、一定の資格や職業に制限がかかります。
ここでは、自己破産による資格制限について解説します。
資格制限を受ける仕事・職業
自己破産により制限を受ける資格や職業に就いている場合、破産手続中はその資格や職業に就けません。制限を受ける資格・職業の主な例は次のとおりです。
- 士業(弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士・社会保険労務士など)
- 生命保険募集人・損害保険代理店
- 警備員・警備業者
- 不動産鑑定業者
- 旅行業務取扱主任者・旅行業者
- 風俗営業を営もうとする者・風俗営業の営業所管理者
- 一般廃棄物処理業者・産業廃棄物処理業者・特定管理産業廃棄物処理業者
- 証券取引外務員・証券金融会社の役員
- 建築設備資格者・一般建設業・特定建設業・宅地建物取引業
- 漁船保険組合の組合員
- 卸売業者
資格制限から復権までの期間
資格制限はずっと続くわけではありません。資格や職業の制限が解除されれば、仕事に戻れます。
資格制限の期間
資格・職業の制限期間は、各資格の制限を定める法令ごとに異なります。制限を受ける資格・職業に就いている場合は、当該資格に関する法律を確認しましょう。
多くの場合、資格制限を受ける期間は、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの3~6ヶ月程度です。
復権する時期
資格や職業の制限が解除されることを復権と呼びます。裁判所から免責が得られれば、免責許可決定の確定によって復権します。
ただし、免責が許可されない場合はすぐに復権されません。この場合は、次のいずれかのタイミングで復権します。
- 借金を完済したとき
- 個人再生計画認可決定が確定したとき
- 破産手続開始決定から10年経過したとき
復権方法に関する詳細は関連記事をご参照ください。
自己破産すると仕事道具も没収される?
自己破産では、一定の財産が処分されます。では、個人事業主が自己破産する場合、仕事道具も没収されるのでしょうか。
ここでは、仕事道具も自己破産で処分の対象となるかどうかを解説します。
仕事道具は原則として没収されない
個人事業主が自己破産する場合、原則として仕事道具は没収されません。仕事に必要不可欠な道具等が没収されると、その後の事業継続が不可能になるからです。
余分な資産や売掛金は没収させる可能性がある
没収の対象とならないのは、原則として仕事に不可欠な道具・機材等です。
次のものは、自己破産で処分の対象となることがあります。
- 処分されても業務に支障がない余分な資産
- 破産手続開始決定までに発生した売掛金債権
廃業する場合は仕事道具も没収される
廃業する場合、仕事道具は不要となるので換価処分の対象となります。
仕事してる人が自己破産すると給料・ボーナス・退職金はどうなる?
ここでは、自己破産における給与・ボーナス・退職金の取扱いを解説します。
自己破産しても給料は受け取れる
開始決定後に発生する給与債権は、換価処分の対象となりません。破産手続開始決定後に受け取る収入は新得財産として処分の対象から外れるからです。
破産手続開始決定時点で金額が確定している給料は財産処分の対象となる
破産手続開始決定後に受け取る収入でも、開始決定時点で受け取ることが確定しているものは例外的に財産処分の対象になります。
例えば、給料の支払方法が毎月末締め・翌月15日払いである場合、4月10日に開始決定がなされれば、4月15日の給料は換価処分の対象となります。
なお、給料等の債権は、4分の3は差押禁止債権となり、残りの4分の1が差押可能財産となります。給料が33万円を超える場合は、4分の1の金額または給料から33万円を差し引いた金額全額のどちらか大きい金額が差押可能財産となります。
実務上は原則として給料が処分されることはほとんどない
開始決定時点で受け取ることが確定している給料でも、実務上は処分の対象とならないのがほとんどです。例え4分の1でも処分されると、生活に支障を及ぼすおそれがあるからです。
ただし、給料が高額である場合やボーナスは、処分の対象となる可能性があります。
開始決定前の給料・ボーナスは没収される可能性がある
既に受け取っている給料・ボーナスは、次のとおり現金または預貯金として取り扱われます。
- 受け取った給料を現金で保管している場合は現金
- 受け取った給料が預貯金口座に入っているのであれば預貯金
よって、現金または預貯金として換価処分の対象となるかどうか決められます。
裁判所によって異なりますが、次の場合は、現金または預金が処分の対象となります。
- 現金が99万円以上の場合(超えた部分)
- 預貯金が20万円以上の場合
退職金の取扱い
退職金の取扱いは、裁判所の運用により異なります。
以下、東京地方裁判所の運用を紹介します。
既に退職している場合
既に退職して退職金を受け取っている場合は、その退職金の保管方法により現金または預貯金として扱われます。次の場合は、自由財産として残せます。
- 現金の場合は99万円以下
- 預金の場合は20万円未満
退職の予定がある場合
退職する予定がある場合や、退職金の受け取りが未了の場合は、退職金の4分の1が処分の対象となります。
ただし、退職金の4分の1に相当する額が20万円未満の場合は、自由財産として処分の対象から外れます。
退職の予定がない場合
退職の予定がない場合は、退職金見込額の8分の1が処分の対象となります。
ただし、退職金の8分の1に相当する額が20万円未満の場合は、自由財産として処分の対象から外れます。
自己破産は仕事先にバレる?
基本的に、自己破産したことが仕事先にバレることはありません。では、どのような場合に仕事先にバレる可能性があるのでしょうか?
ここでは、自己破産したことが仕事先にバレるケースを紹介します。
仕事先から借入していたらバレる
仕事先から借入していたら、破産手続きにおいて仕事先を債権者として申告しなければなりません。
仕事先からの借入がある場合は、弁護士からの受任通知や裁判所からの書面で、自己破産の事実を仕事先に知られます。
退職金見込額証明書の発行依頼時にバレる可能性がある
自己破産に必要な書類のひとつに退職金見込額証明書があります。仕事先に退職金制度がある場合、退職金見込額証明書を提出する必要があります。
退職金見込額証明書の発行を依頼した場合、提出先や理由の説明を求められることがあります。それにより、自己破産することがバレる可能性があります。
退職金見込額は、退職金見込額証明書以外の方法でも証明できます。退職金規程や就業規則のコピーを入手して退職金見込額を計算すれば、仕事先に証明書の発行を依頼する必要はありません。
資格制限を受ける仕事であれば官報掲載でバレる可能性がある
自己破産すると、次の2回のタイミングで官報に住所・氏名等が掲載されます。
- 破産手続開始決定が出たとき
- 免責許可決定が出たとき
一般的な会社では日常的に官報を確認することはありません。しかし、士業・金融業等の職種によっては日常的に官報をチェックしていることがあります。この場合、官報の情報から自己破産したことがバレる可能性があります。
給与を差し押さえられたらバレる
自己破産しなくても、借金の滞納により債権者に給与を差し押さえられると、勤務先に借金の事実がバレます。
その後自己破産を申立て、破産手続開始決定を受ければ、差し押さえを止められますが、その場合も、勤務先に裁判所からの通知が届きます。よって、自己破産したことも会社に知られます。
自己破産したことを理由に解雇されることはありませんが、勤務先で肩身の狭い思いをするかもしれません。
まとめ
自己破産しても基本的には仕事に影響が出ることはありません。
ただし、資格制限のある職業に就いている方は、破産手続中その仕事に就くことができません。ご自身の仕事への影響を過度に心配するあまり、自己破産による再スタートに踏み切れない方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産以外の方法で借金問題を解決できる可能性があるかもしれません。