在宅事件になるとどうなる?捜査の流れや身柄事件との違いを解説

刑事事件が起きると、警察に逮捕され取調べがなされるものとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、中には被疑者を逮捕しないまま捜査を進めるケースもあり、こうした事件を在宅事件といいます。

 

本コラムでは、主に以下の点について、解説します。

  • 在宅事件の特徴
  • 被疑者の身体拘束を伴う身柄事件との違い
  • 在宅事件の刑事手続きがどのように進んでいくのか

 

在宅事件とは

在宅事件とは、被疑者の身柄を拘束せずに捜査が進む事件のことです。

警察などから呼び出されて取り調べなどを受ける以外は、通常通りの生活を送りながら捜査が進みます。

 

在宅事件と身柄事件の違い

在宅事件は、3つの点で身柄事件と異なります。

 

1. 逮捕の有無

2. 捜査期間

3. 国選弁護人がつくかどうか

 

1つずつ、確認していきましょう。

 

逮捕の有無

1点目の違いは、被疑者が逮捕されるか否かです。被疑者の身体拘束を伴わない点が在宅事件最大の特徴です。

 

被疑者を逮捕するかしないかはどのように決められるのでしょうか。

 

警察が被疑者を逮捕する場合は、裁判所が発付する逮捕状を得なければなりません(現行犯逮捕以外)。逮捕時に逮捕状を必要としない緊急逮捕もありますが、緊急逮捕であっても逮捕後ただちに逮捕状を請求しなければなりません(刑事訴訟法第210条第1項前段)。

 

請求があれば無条件に逮捕状が発付されるわけではありません。被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるかどうかを裁判官が判断します。相当な理由があると判断されれば逮捕状は発付されますが、刑事訴訟法第199条は「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない」と定めています。

 

「明らかに逮捕の必要がない」場合の具体例として、刑事訴訟規則第143条の3は被疑者に逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを挙げています。

つまり、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があっても、逃亡・証拠隠滅のおそれがないと認められれば、在宅事件として捜査が進む可能性があるということです。

 

ただし、殺人などの法定刑が重い犯罪に関しては在宅事件になりにくく、在宅事件になりやすいのは法定刑が比較的軽い犯罪だといえます。

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捜査期間

身柄事件と比べて、在宅事件の捜査期間は長くなる傾向があります。

 

その理由は、身柄事件は刑事手続きの各段階で期限が定められているのに対し、在宅事件は捜査期間の定めがないからです。

 

例えば、警察は被疑者を通常逮捕すると、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法第203条第1項)。被疑者を送致された検察官は、勾留が必要だと判断した場合、24時間以内に裁判所に勾留を請求しなければなりません(同法第204条第1項)。

 

勾留が認められても、その期間は10日と定められており、「やむを得ない」理由があって延長が認められても、延長期間は10日です。つまり、勾留期間は最長で20日ということになり、検察官はその期間内に被疑者を起訴しない場合、被疑者を釈放しなければなりません。また、一定の犯罪類型については最大5日間の再延長が認められることがあります(以上、刑事訴訟法第208条、同法第208条の2)。

 

一方、在宅事件にはこうした期限はありません。そのため、身柄事件よりも捜査期間が長くなることがありますが、具体的な期間はケースバイケースです。長いものだと、捜査に1年以上を要するケースもあります。

 

国選弁護人がつくかどうか

身柄事件では被疑者は国選弁護制度を利用できますが、在宅事件の被疑者は国選弁護制度を利用できません

 

国選弁護制度とは、勾留請求された被疑者または勾留が決まった被疑者に国選弁護人をつける制度です。

被疑者が貧困などにより弁護人を選任できない場合に、国が弁護士費用を負担して国選弁護人を選任します。

 

在宅事件では被疑者の段階での国選弁護制度はなく、起訴されて初めて国選弁護制度が利用できるようになります。

 

起訴されるリスクを少なくするためには、被疑者自身で私選弁護人を選任しなければなりません。

在宅事件と身柄事件の切り替えについて

身体拘束を伴わない点が在宅事件の特徴ではありますが、在宅事件から身柄事件に切り替わることもあります。また、一定の要件を満たした場合には身柄事件から在宅事件に切り替わることもあります。

 

在宅事件から身柄事件に切り替わることはあるか

在宅事件扱いになるには、被疑者に逃亡・証拠隠滅のおそれがないなど「明らかに逮捕の必要がない」と認められなければなりません(刑事訴訟法第199条第2項但書参照)。逆に言えば、逃亡・証拠隠滅のおそれがあるとみなされると、警察などに逮捕され身柄事件に切り替わる可能性もあるということです。

 

例えば、在宅事件として捜査が進んでいたものの、被疑者が警察からの呼び出しに全く応じない場合などは、逃亡・証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕される可能性もあります。

 

身柄事件から在宅事件に切り替わることも

一方、身柄事件から在宅事件に切り替わるケースもあります。

 

例えば、検察官が裁判所に被疑者の勾留を請求したときに、弁護士が勾留請求を却下するよう求める意見書を提出するなどして、実際に勾留請求が却下されることもあります。こうした場合は被疑者が釈放され、在宅事件扱いになります。

 

在宅事件による生活、仕事への影響は

在宅事件は身柄事件と比べて、仕事などに与える影響は小さいといえます。

 

事件を起こして逮捕されれば、釈放されるまでの間は通勤・通学はできなくなります。一方、身体拘束を伴わない在宅事件であれば、警察などから呼び出され取調べなどを受けることはあっても、原則通常通りの生活を送れます。

 

警察などから呼び出される頻度は事件の内容や捜査の進み具合などによってさまざまです。

 

在宅事件の捜査が進むとどうなる?

在宅事件だからといって、被疑者に下される処分が軽いもので済むとは限りません。在宅事件であっても、書類送検された後に起訴される可能性がある点は、身柄事件と同様です。

 

書類送検

警察などは犯罪の捜査を行った場合、原則として事件を検察官に送致しなければなりません。在宅事件の場合、警察などは関係書類や証拠物をあわせて検察官に送致します。このことは一般に書類送検と呼ばれています。

 

起訴

事件を送致された検察官は、被疑者を起訴するか不起訴とするかを決めます。

 

起訴・不起訴の判断に際しては、次のような要素が考慮されます。

 

  • 被疑者の性格、年齢および境遇
  • 犯罪の軽重および情状
  • 犯罪後の情況など

 

検察官は上記のような事情を総合的に勘案し、処分を決めます。在宅事件であれ身柄事件であれ、検察官が処分を決める際に考慮する要素は変わらず、在宅事件でも起訴される可能性はあります。

在宅事件で弁護士ができること

在宅事件になった場合は、比較的軽い刑事処分で済むよう早めに対策しましょう。

 

弁護士は取調べへの対応方法の助言や、被害者との示談交渉を行います。

 

取調べに際してのアドバイス

取調べで供述した内容は供述調書にまとめられます。この供述調書は刑事裁判で証拠にもなるため、取調べで何を供述するかは重要です。

 

被疑者にとって不利な供述は拒むことも可能で、供述調書の内容に誤りがあれば訂正を求めたり署名押印を拒んだりできます。

 

弁護士に相談すれば、取調べにあたっての適切なアドバイスが得られるだけでなく、精神的負担を軽くする効果も期待できます。

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被害者との示談交渉

弁護士は被疑者に代わって被害者と示談交渉を行うこともできます。

 

被害者との間で示談がまとまれば、被害届を取り下げてもらったり加害者を許す意思を示してもらったりすることが可能です。

 

このような示談の成立により、検察官が被害者の処罰感情は和らいでいると判断すれば、不起訴になる可能性は高まります。

まとめ

在宅事件の被疑者は国選弁護制度を利用できません。弁護士をつけないまま捜査が進んでいくと、弁護士をつけた場合と比べて重い刑事処分が下る可能性もあります。在宅事件であっても起訴され実刑が言い渡されることもあります。在宅事件の被疑者として警察などから取調べを受けている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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