逮捕期間中の取調べで行われることと留意点、知っておくべき点
逮捕期間期間とは逮捕から勾留決定が出るまでの間のことをいいます(図①から⑧までの期間)。
この期間中は逮捕直後ということもあって、逮捕された方は精神的にも動揺している時期です。
しかし、この期間中から取調べを受けが行われますし、そこで話した内容を元に調書が作成されると裁判での証拠とされます。
そこで、できれば取調べに先立って弁護士からアドバイスを受け、法律で認められた権利を適切に行使することが大切となります。
逮捕後の流れと取調べ
まずは、逮捕後の流れを確認しましょう。
警察に①逮捕された後は②警察署内の留置施設に収容されます。
収容後は③警察官の弁解録取という手続きを受けます。
事件が検察庁へ④送致された後は⑤検察官の弁解録取を受けます。
弁解録取とは、警察官や検察官が逮捕事実について逮捕された方から弁解(話、言い分)を聴く手続きです。
弁解録取といいますが、実質は取調べと変わりありません。
取調室において警察官、検察官と対面し、事件に関する話を様々聴かれます。
事件の難易度や逮捕された方の認否などによっては長時間にわたり厳しい追及を受けることがあります。
なお、警察官、検察官は必要と認めるときはいつでも取調べを行うことができます。
したがって、上記の①から⑧の間であっても弁解録取とは別に取調べを受けることがあります。
場合によっては、弁解録取に引き続き取調べを受けることもあります。
取調べで行われること
弁解録取では、話を聴かれる前に、まず逮捕された方がいつ、どこで、どんな方法で何をし、どんな結果(被害)が発生したのか、つまり犯罪事実(逮捕事実)を告げられます。
その上で事実を認めるのか、認めないのか(事実の認否)を聴かれます。
認める場合は事件の動機や犯行状況などを簡単に聴かれます(詳細は取調べで聴かれます)。
認めない場合はどの点に誤りがあるのか聴かれ、厳しい追及を受けることになるでしょう。
そして、話した内容は弁解録取書(取調べの場合は供述録取書)という書類に記載されます。
弁解録取書(取調べの場合は供述録取書)を作成するのは逮捕された方ではなく取調官ですから、内容に誤りがある場合もあります。
したがって、書類作成後は、逮捕された方に対しその内容の閲覧、あるいは読み聞かせの機会が与えられ、記載内容に間違いがあれば訂正する権利が認められています(後ほど解説します)。
なお、記載内容に間違いがない場合は、弁解録取書(取調べの場合は供述録取書)に署名、押印することを求められます。
取調べで留意すべきこと
次に、取調べで留意すべきこと、知っておくべきことをご紹介します。
権利を適切に行使しよう
取調べ(及び弁解録取)では以下の権利が認められています。
適切に行使できるよう覚えておきましょう。
黙秘権
取調べ中、終始沈黙できる権利です。
沈黙したこと自体をもって不利に取り扱うことは許されません。
増減変更申立権
弁解録取書、供述録取書に記載された内容に付け加えたり、内容を削除したり、あるいは内容自体の変更を申し立てることができる権利です。
どんな些細なことでもいいですので、気になる点は遠慮なく申し立てましょう。
署名押印拒否権
弁解録取書、供述録取書への署名、押印を拒否できる権利です。
ここで安易に署名、押印すると、書類に記載された内容=逮捕された方の言ったこと、として扱われます。
なお、仮に記載内容に間違いがない場合でも拒否することができます。
接見交通権
弁護士と立会人なく自由に接見できる権利です。
接見によって、取調べに関する具体的なアドバイスを受けることができます。
逮捕直後の接見は特に重要です。
弁護人選任権
文字通り、弁護人を選任できる権利です。
なお、逮捕期間中(上記図①から⑧までの期間中)は国選弁護人を選任することはできず、必要であれば私選弁護人を選任する必要があります。
はやめに弁護士と接見しよう
弁護士との接見では警察官の立会人は付きません。
弁護士と2人きりとなって弁護士に気兼ねなく相談することができます。
取調べに先立ち不安なことがあれば遠慮なく相談しましょう。
また、接見が取調べの後になったとしても、不満や不安は遠慮なく弁護士に伝えておきましょう。
なお、逮捕期間中に接見に来てくれるのは当番弁護士と私選弁護士です。
当番弁護士は弁護士会から派遣され、無料で接見を行ってくれる弁護士ですが、接見は1回限りで、接見後の弁護活動を行ってくれるわけではありません。
私選弁護士はご家族などが法律事務所と契約し、その法律事務所から派遣された弁護士です。
費用はかかりますが、対応が早い、刑事事件を熟知しているなどのメリットがあります。
警察、検察、裁判所はそれぞれ異なる機関
逮捕期間中は、③警察での弁解録取、⑤検察での弁解録取、⑦裁判所での弁解録取と3回、事件について話を聴かれる機会が設けられています。
これは警察、検察、裁判所がそれぞれ異なる機関であり、それぞれの観点から身柄拘束の可否、要否を慎重に判断させるためです。
したがって、警察での弁解録取や取調べで話した内容をそのまま検察で話さなければならないわけではありません。
また、警察、検察での弁解録取や取調べで話した内容をそのまま裁判所で話さなければならないわけでもありません。
異なったことを話してもいいですし、警察、検察での不満を述べてもいいわけです。
まとめ
取調べの相手は捜査のプロです。
何もせずにいると相手の思うように言いくるめられるおそれもあります。
もし、取調べに不安・不満がある場合ははやめに弁護士に相談し、適切に対処してもらいましょう。