刑事事件における初犯について気になる点を解説
初犯(しょはん)とは、刑事事件で過去に前科前歴がなく、初めて罪を犯すことを言います。
“初犯なら実刑にならない” “初犯なら不起訴になる”など、初犯なら刑罰が軽くなると聞いたことがあるかもしれません。
この記事では、初犯についての基礎知識と事件の結果について解説します。
目次
初犯の基礎知識
初犯の詳細についてはあいまいな点があるかと思います。ここでは、初犯に関する基礎知識について解説します。
初犯とは
初犯とは、明確な基準が決まっているわけではなく、主に以下の2つの意味で用いられています。
- 刑事事件で過去に前科前歴がなく、初めて罪を犯すこと
- 刑事事件の裁判で初めて有罪判決を受け、刑が確定した最初の経歴
1.は、過去に被疑者となり捜査を受けたなど、前歴がある場合は初犯とはなりませんが、2.は、前科一犯目のことであり、前歴がある場合でも初犯となります。
初犯者率の推移
下記の図は、刑法犯により検挙された人員と再犯者率の推移です。
昭和47年からのデータを見ると、初犯者の人員は増減を繰り返しながら徐々に減少傾向でした。その後平成12年の205,645人からは毎年増加し続けていましたが、平成16年の250,030人をピークとして、その後は毎年減少し続けています。令和2年の初犯者は92,915人で、ピークの平成16年と比べると62.8%減少しています。
【犯罪別】犯罪者率
出典:【検察統計統計表】
令和2年 罪名別 起訴した事件の被疑者の初犯者、前科者別及び前科の種類別人員
令和2年 罪名別 起訴猶予処分に付した事件の被疑者の初犯者、前科者別及び前科の種類別人員
社会復帰するには、再犯防止が課題
データを見ると、検挙された人は減少傾向にあるものの、再犯者の割合は増えています。
罪を犯した人は、事件について反省し、生活を立て直していく必要があります。しかし、中にはその後の仕事や住居が定まらないために、再び罪を犯してしまうケースがあります。そのため、犯罪のない安心して生活できる社会を実現するためには、再犯防止が重要な課題です。
刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)や少年院、少年鑑別所でも再犯防止の取り組みを行っており、社会に出てからは保護司や保護観察官などが更生保護の活動をしています。
初犯の場合、刑事事件の結果はどうなる?
刑事事件の流れは、初犯かどうかに違いはありません。
ここでは、起訴されるかどうかや、起訴された場合の刑罰について違いがあるのかを解説します。
前歴と初犯の違い
前歴は、以下のような場合につきます。
- 被疑者として逮捕され捜査機関から捜査を受けたが、不起訴処分になった
- 比較的軽微な犯罪で警察のみの捜査で終了し釈放になった(微罪処分)
初犯については前述のとおり明確な基準がありません。前歴をどうとらえるかは検察官が判断するため、比較的最近に前歴があり、同じ罪を犯した場合は初犯と扱われない可能性が高くなります。
初犯でも起訴される可能性がある
逮捕されると捜査機関による捜査が行われ、検察官は捜査資料をもとに起訴するかどうかを判断します。
前歴がない場合は初犯とみなされ起訴猶予になる可能性がありますが、前歴がある場合は反省していないと判断され起訴される可能性が高まります。また、初犯でも悪質性が高い犯罪や、それまでに同様の前歴がある場合は起訴される可能性が高くなり、検察官が事件を起訴できないと判断しない限りは、初犯でも起訴されます。
初犯と再犯で刑罰は変わるのか
再犯という言葉はいろいろな意味で使われますが、ここでは刑事裁判を受け、有罪判決を受けた者が再度罪を犯した場合とします。
刑罰は刑法や法令で罪名ごとに定められていますが、初犯で反省し示談が成立していれば量刑が軽くなる可能性もあります。ただし、初犯であるというだけで刑罰や量刑が軽くなるとは限りません。
再犯となれば、被告人が反省をしているとは思われず、以前の判決内容では反省を促すには不十分だったとして、特に以前の犯罪と同じである場合は量刑が重くなる可能性があります。
初犯は執行猶予になるのか
刑法第25条には“執行を猶予することができる”と記載されています。“する”ではなく“することができる”となっていることに注目です。初犯の場合は条件を満たせば執行猶予になる可能性がありますが、犯罪の内容によっては、初犯だからといって執行猶予になるとは限りません。
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
初犯でも実刑になるのはこんなとき
初犯でも、以下のような場合は実刑になる可能性があります。
- 反省をしていない
- 犯行が悪質である
- 被害額が高額である
- 余罪が多数ある
- 3年以下の懲役刑または禁錮刑を含んでいない犯罪
自身が犯した罪を認め、被害者に謝罪し示談が成立しているケースでは、実刑判決を言い渡される可能性は低くなります。しかし、罪を認めず被害者に対しても謝罪する意思がなければ、有罪になった場合は実刑判決が言い渡される可能性があります。
傷害であればかすり傷、窃盗であれば数百円程度の軽微なものであれば、執行猶予になる可能性がありますが、生死にかかわるような傷を負わせた場合や、窃盗で数千万円を盗んだような場合は、実刑判決が言い渡される可能性があります。
初犯の場合でも、強制わいせつなどで事件が複数件起訴されている場合は、その分刑も重くなるため、実刑判決が言い渡される可能性があります。
刑法第25条(刑の全部の執行猶予)、第27条2(刑の一部の執行猶予)において、執行猶予にできるのは、3年以下の懲役又は禁錮の言い渡しを受けた場合です。つまり、それ以上の法定刑の場合は、執行猶予判決にはなりません。
初犯で逮捕されたら弁護士に相談を
初犯で逮捕された場合は、速やかに弁護士に相談することで、様々な弁護活動をしてもらえます。犯罪の事実は無くせませんが、再犯防止に関するアドバイスも提示してもらえます。
事件解決までの流れ
ネクスパート法律事務所は、チームで動いているので、スピード感をもって業務にあたれます。
不起訴・執行猶予を目指す
まずは不起訴を目指し、起訴された場合は執行猶予を目指します。
初犯だと執行猶予がつくと聞いたことがあるかもしれませんが、初犯であったとしても必ずつくとは限りません。ですが、初犯の場合は執行猶予の条件に合うことが多いので、執行猶予がつきやすいとされます。
再犯防止のための取り組み
検挙された人数は減少傾向にあるものの再犯率は上昇傾向にあります。その背景には以下のようなものがあります
- 社会的に孤立する
- 就業場所がない
逮捕されたことが世間に知られ、執行猶予が付いたとしても有罪判決を受けると、噂になり社会的に孤立してしまい、再び罪を犯してしまう悪循環になる可能性が高くなります。
一度付いたイメージを払拭することは難しいのです。
仕事は、収入を得るという目的以外に、やりがいを持ち第三者から認められる機会になり、罪を犯さないようにするという意識にもつながります。
法務省は、関係省庁や地方公共団体、および民間協力者などと連携し、再犯防止対策を進めています。
参照:法務省 再犯防止対策
ネクスパート法律事務所の弁護士費用
初犯と再犯で弁護士費用は変わりませんが、再犯で複雑な案件になった場合は、金額が高くなる可能性があります。弁護士費用については、初回面談の際に弁護士にご確認ください。
まとめ
示談交渉などは、弁護士でなければ連絡先を把握できないケースがあります。初犯でも起訴される可能性があるので、不起訴や執行猶予を獲得するためには早めに弁護士に相談することをお勧めします。
ネクスパート法律事務所では、ご相談を24時間受け付けておりますので、まずはお電話、メール、お問い合わせフォームよりご連絡ください。