脅迫罪と恐喝罪はどう違う?|脅迫罪や恐喝罪で逮捕された場合の刑罰についても解説
ニュースでもよく耳にする脅迫罪と恐喝罪。どこが違うのでしょうか?この記事では二つの罪の違いや量刑の違い等について解説します。
脅迫罪と恐喝罪
脅迫罪と恐喝罪についてそれぞれ解説します。
脅迫罪とは
刑法第222条に脅迫罪についての規定があります。
刑法第222条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
引用:e-GOV法令検索
構成要件
脅迫罪の構成要件は以下2つです。
- 生命、身体、自由、名誉又は財産の5つに対して
- 害を加える旨を告知することによって人を脅す
加害者が直接あるいは間接的に加えることができる害であること、一般的に人を畏怖させるに足る害の告知が必要です。
例えば「お前の家をミサイルで攻撃してやる」と相手に告知しても、加害者が直接あるいは間接的に実現できる害ではないため、脅迫罪には該当しません。
恐喝罪とは
刑法第249条に恐喝罪についての規定があります。
刑法第249条 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
引用:e-GOV法令検索
構成要件
恐喝罪の構成要件は以下2つです。
- 人を恐喝する
- 恐喝により人に財物を交付させる
恐喝とは、暴行または脅迫により人を畏怖させる行為です。
財物を交付させるとは財物の占有を取得することです。
恐喝罪は、相手が畏怖する程度の暴行または脅迫行為の結果、相手が畏怖したことで財物を交付し、当該財物の占有が加害者に移転したことで成立します。
脅迫罪と恐喝罪の違い
脅迫罪と恐喝罪の違いは以下の表をご確認ください。
脅迫罪 |
恐喝罪 |
|
行為 |
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し、畏怖を感じさせる程度の害悪を加える旨の告知する | 人が畏怖する程度の脅迫又は暴行をする |
目的 |
畏怖させる | 財物を交付させる |
結果 |
害悪の告知が被害者に到達する | 財物が移転する |
刑罰 |
2年以下の懲役または30万円以下の罰金 | 10年以下の懲役 |
未遂 |
なし | 軽減できる |
時効 |
3年(刑事訴訟法第250条) | 7年(刑事訴訟法第250条) |
脅迫罪と恐喝罪の刑罰等の違い
脅迫罪と恐喝罪の刑罰等の違いについて詳しく解説します。
刑罰
刑法に各罪の刑罰について以下のように規定されています。
- 脅迫罪の刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 恐喝罪の刑罰は10年以下の懲役
大きな相違点は恐喝罪には罰金刑が無いことです。恐喝罪は罰金刑の定めがない重い罪です。罰金刑が無いので、略式起訴になりません。
起訴されると99.9%有罪になり、実刑判決が言い渡される可能性があります。実刑判決が言い渡されると刑務所に収監されます。
起訴率の違い
法務省の検察統計によると令和3年の脅迫罪の起訴率は37.5%、恐喝罪の起訴率は29.1%でした。
令和3年版犯罪白書によると令和2年の脅迫罪の検挙率は87.3%、恐喝罪の検挙率は86.9%でした。
脅迫罪・恐喝罪共に検挙率は高いですが、特に恐喝罪の起訴率が低いことがわかります。
脅迫罪も恐喝罪も警察が事件を認知すると逮捕される可能性が高いですが、逮捕されたからといっても必ずしも起訴されてしまうわけではありません。特に恐喝罪の起訴率にはそれがはっきり示されています。
何故そのような結果になるかは、後述の弁護士活動の箇所をご覧ください。
科刑状況について
脅迫罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金であるため、科刑状況表には記載がありません。令和3年版犯罪白書によると令和2年の恐喝罪の科刑状況については以下の通りです。
懲役 | 7年を超え10年以下 | 5年を超え7年以下 | 3年を超え5年以下 | 2年を超え3年以下 | 1年を超え2年以下 | 6月を超え1年以下 | 6月未満 |
実刑 |
1 |
1 |
11 |
52 |
59 |
3 |
|
執行猶予 |
115 |
99 |
恐喝罪の科刑状況は2年を超え3年以下で執行猶予付き判決が最も多く、次いで1年を超え2年以下の執行猶予付き判決が多いです。実刑判決では1年を超え2年以下が最も多いです。
脅迫罪または恐喝罪で逮捕された場合の弁護士活動について
脅迫罪または恐喝罪で逮捕された場合に弁護士が被疑者・被告人のためにする活動について解説します。
示談交渉をする
脅迫罪・恐喝罪は共に被害者がいる犯罪です。被害者との間で示談が成立すれば、被害届を取り下げてもらえる可能性があります。被害届を取り下げてもらえれば不起訴になる可能性が高くなります。起訴されても執行猶予付き判決になったり、刑を減軽してもらえたりする可能性があります。
不起訴を目指す
脅迫罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金であるため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴を獲得できる可能性が高いです。
恐喝罪は罰金刑の定めの無い重い犯罪です。弁護士は被害者が被った恐怖等を加害者に伝え、反省を促し、今後二度と同様の罪を犯さないようにと加害者に反省を促します。
加害者が自分の犯した罪を自覚し被害者に真摯に謝罪し、被害を弁償し示談が成立した場合には、不起訴を獲得できる可能性があります。
刑の減軽を目指す
令和3年版犯罪白書によると、恐喝罪の執行猶予の割合は約6割です。5年を超える懲役刑を言い渡されたのが341人中2人であったことからも、刑の減軽の可能性は高いと思われます。
まとめ
脅迫罪および恐喝罪について比較しながら解説しました。
被疑者や被告人にとって有利な結果を得るには、被害者との示談成立が必須です。脅迫罪や恐喝罪で逮捕された方は、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士は、被害者との示談に尽力します。示談成立と被害者の宥恕が得られれば、不起訴処分の獲得、脅迫罪の場合には罰金刑の獲得、あるいは起訴されたとしても執行猶予付き判決が期待できますし、仮に実刑となったとしても刑期の軽減の可能性が高くなります。