DV防止法とは?保護命令の種類、出るまでの流れについて解説
DV防止法には保護命令に関する規定が設けられています。以下では、
- DV防止法
- 保護命令の種類
- 保護命令を申し立てるための要件や流れ
- 保護命令に関する罰則
などについて詳しく解説してまいります。
DV防止法とは
DV防止法とは、正式名称、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律、といいます。
配偶者からの暴力(※1)は、ときに被害者(※配偶者からの暴力を受けた者)の重大な死亡、重症など取り返しのつかない事態へと発展しかねません。
それにもかかわらず、DVは身内の問題であり外部から分かりにくいという特質を有しており、DV防止法制定以前は、被害者の救済が必ずしも十分には行われていない状況でした。
そこで、こうした事態を救済すべく、配偶者(※2)からの暴力に係る通報、相談、保護、自立DV防止法は、一部の規定を除き、2001年(平成13年)10月13日から施行されており、その後、3度の改正を経て現在に至っています。
- (※1)配偶者からの暴力
- 身体に対する暴力
- 上記に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動
- 上記の暴力、言動を受けた後、離婚し、又は婚姻が取り消された場合に、当該配偶者であった者から引き続き受ける暴力、言動
- (※2)配偶者
- 婚姻届を提出・受理され、法律上婚姻関係にある者
- 婚姻届を提出していないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある者
- 離婚届を提出・受理され、法律上離婚した者
- 事実上、婚姻関係と同様の事情にあったものの、事実上離婚したのと同様の事情にある者
DV防止法の保護命令とその種類
DV防止法では、被害者救済の一環として保護命令という制度を設けています。
保護命令とは、被害者の生命、身体を保護するため、裁判所から配偶者に対して出される禁止命令のことをいいます。
以下、保護命令の種類を解説してまいります。
接近禁止命令
命令の効力が生じた日から起算して6か月間、被害者の住居(配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他被害者が通常所在する場所の付近をはいかいしてはならない旨の命令
退去命令
命令の効力が生じた日から起算して2か月間、被害者と共に生活の本拠している住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならない旨の命令
また、接近禁止命令が出されるのと同時か、あるいはすでに出されている場合には、以下の命令(子への接近禁止命令・親族等への接近禁止命令)も併せて出されることがあります。
つまり、以下の命令が単独で出されることはありません。命令の効力はいずれも、接近禁止命令の効力が生じた日から起算して6か月です。
子への接近禁止命令
被害者と同居している未成年の子の就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい、又は当該子の住居、就学する学校その他通常所在する場所付近をはいかいしてはならない旨の命令(未成年の子が15歳以上であるときは、その者の同意が必要)
親族等への接近禁止命令
被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(親族等)の住居(配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く)その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい、又は当該親族等の住居、勤務先その他通常所在する場所付近をはいかいしてはならない旨の命令(当該命令の申立てをするには、親族等(※)の同意が必要です。
※親族等
当該親族等が15歳未満の者又は成年被後見人である場合は、その法定代理人
電話等禁止命令
次の行為をしてはならない旨の命令です。
- 面会の要求
- 監視していると告げる行為等
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
- 無言電話、緊急やむを得ない場合を除く、連続した電話・ファクシミリ・電子メール
- 汚物等の送付等
- 名誉を害することを告げる行為等
- 性的羞恥心を害することを告げる行為等
申立ての要件と保護命令が出されるまでの流れ
接近禁止命令と退去命令の申立ての要件は
- 配偶者からの身体に対する暴力を受けた被害者(については)
→配偶者からの更なる身体に対する暴力 - 配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた被害者(については)
→配偶者から受ける身体に対する暴力
により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合です。
その他の命令については、命令ごとに要件が異なります。
保護命令が出されるまでは、大まかに、
- 被害者の裁判所に対する申立て
- 審理
- 保護命令申立てに対する決定
- 決定内容の言い渡し、決定書の送達
という流れで進んでいきます。
申立て先の裁判所は配偶者の住所地を管轄する裁判所です。
申立てを行うには、必要事項を記載した申立書と添付書類を管轄裁判所に提出する必要があります。
申立書の中には「配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察署職員に相談等をした事実の有無等」を記載する欄が設けられています。
記載できない場合は、公証人役場での手続きが必要となりますから、できる限り、申立て前に配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察署職員に相談しておくことが望ましいといえます。
申立書に不備がなく受理された場合は、申立てから約1週間前後で、申立人である被害者が裁判所に出頭して裁判官の質問を受けます。
その後、約1週間前後で、配偶者が裁判所に出頭して裁判官の質問を受けます。
質問が終わった後、配偶者に対して保護命令が言い渡されることもあれば、何回かの審理を経て、決定書の送達により保護命令を告知する方法が取られることもあります。
なお、申立てを認めない決定、認める決定に対しては、決定を受けた日の翌日から起算して1週間以内に限り、不服を申し立てることができます。
保護命令に関する罰則
保護命令に関する罰則は配偶者に対する罰則と被害者に対する罰則が設けられています。
配偶者に対する罰則は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。裁判所から受けた保護命令に違反した場合に科される可能性があります。
被害者に対する罰則は「10万円以下の過料」です。厳密にいうと過料は刑罰ではなく罰則とはいえませんが、ここで併せて紹介させていただきます。
虚偽の記載のある申立書により保護命令の申立てをした場合に科される可能性があります。
まとめ
DV防止法に規定されている保護命令は配偶者から暴力や脅迫を受けた被害者を保護するための制度です。
保護命令を受けるためには、一定の要件を満たすことを確認できた段階で裁判所に対して申立書等を速やかに提出する必要があります。
ご自身で保護命令を申立てることができるかどうかわからない方は、最寄りの配偶者暴力相談支援センター又は警察署まで相談してみるとよいでしょう。