暴行罪と傷害罪の違いとは?成立要件、罰則について詳しく解説

暴行罪も傷害罪も、基本的には「暴行」を手段とするという点では同じであるため、暴行罪と傷害罪の違いを明確に区別できていない方も多いのではないでしょうか?

そこで、今回は、暴行罪と傷害罪の成立要件、罰則について解説した上で、暴行罪と傷害罪の違いについて分かりやすく解説していきたいと思います。

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暴行罪とは

まず、暴行罪とはどんな罪なのか、暴行罪の成立要件、罰則について確認していきましょう。

成立要件

いかなる場合に暴行罪が成立するかは刑法208条に規定されています。

(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処す。

引用:刑法第208条

暴行罪は「暴行」+「暴行の故意」という要件がそろった場合に成立する犯罪です。

暴行とは、難しい言葉で、人の身体に対する不法な有形力の行使のことをいいます。

人を殴る、蹴る、叩く、押す、投げ飛ばす、馬乗りになる、羽交い絞めにする、物を命中させるなどが典型ですが、こうした直接人の身体に触れる行為のほかに、着衣を引っ張る、胸ぐらをつかむ、人に向かって物を投げる、髪の毛を引っ張る・切る、耳元で大音量の音楽を鳴らすなど、直接人の身体に触れない行為も暴行に含まれます。

また、暴行罪は人の傷害が発生しなかったときに成立します(傷害の意義については傷害罪の箇所で解説します)。暴行罪は、傷害罪の未遂罪ともいえます。

人の傷害が発生しなかったとは、暴行によってそもそも傷害が発生しなかった場合はもちろん、傷害は発生したものの、その傷害が暴行によって発生したものとはいえない場合、すなわち暴行と傷害との間に因果関係がない場合も含まれます。

最後に、暴行罪は暴行の故意が要件です。

暴行の故意とは、人に対して殴る、蹴るなどの有形力の行使をすること行為(事実)を認識し、認容しているということです。

その行為が暴行罪の暴行にあたるかどうかは最終的には裁判官が判断するため、暴行罪の暴行にあたることまでの認識(意味の認識)までは不要とされています。

なお、故意ではなく過失による暴行(腕、肘がたまたま人の顔にあたったなど)を処罰する規定はありません。

罰則

暴行罪の罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。

拘留(1日以上30日未満の範囲で刑事施設に収容される刑罰)、科料(1万円未満のお金を国に納付しなければならない刑罰)が規定されていますが、実務では懲役、罰金が主で、拘留、科料が科されることはほとんどありません。

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傷害罪とは

次に、傷害罪がどんな罪なのか、傷害罪の成立要件、罰則について確認していきましょう。

成立要件

傷害罪は刑法204条に規定されています。

(傷害)
第二百四条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第204条

「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」という暴行罪の規定と併せて考えると、傷害罪の成立要件は「暴行」+「傷害」+「暴行と傷害との間の因果関係」+「故意」が基本となります。

暴行の意義については暴行罪の箇所で解説したとおりです(ただし、刑法204条は傷害の方法を限定していませんので、暴行以外の無形的方法(性病に罹患している者が性交によって性病を感染させるなど)又は不作為(医師などが故意に病人に医薬を与えないで病状を悪化させるなど)による傷害もあり得ます)。

次に、傷害とは人の身体の生理的機能を害することと解されています。

したがって、暴行によって人に傷を負わせた、出血させた、骨折させたなどという場合のみならず、健康不良にさせた、精神的に追い込んだなどという場合も傷害にあたる可能性があります。

そして、その傷害が暴行によって生じたこと、すなわち、暴行と傷害との間に因果関係が認められることが必要です。

暴行罪の箇所で解説しましたが、人に暴行を加えたものの、傷害が発生しなかった、あるいは暴行と因果関係のない傷害だったという場合は傷害罪ではなく暴行罪が成立するにとどまります。

最後に、傷害の「故意」は、暴行罪と同様に、暴行行為の認識さえあれば足りると解されています。

したがって、痛めつけよう、怪我をさせようなどという怪我を負わせる意図はもちろん、暴行によって相手が怪我を負うことになるか、どの程度怪我を負うのかなどという認識までは必要ありません。

なお、前述のとおり、過失による暴行は処罰されませんが、過失による傷害は過失傷害罪(刑法209条、30万円以下の罰金)という別の罪が成立する可能性があります。

罰則

傷害罪の罰則は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

暴行罪と傷害罪の違い

それでは、これまで解説した暴行罪、傷害罪の成立要件、罰則を踏まえ、両罪の違いについてみていいましょう。

成立要件が違う

まず、暴行罪も傷害罪も同じ「暴行」を手段とする点では同じであるものの、暴行罪は傷害という結果を伴わない犯罪であるのに対して、傷害罪は傷害という結果を伴う犯罪であることがお分かりいただけると思います。

なお、暴行によって人に傷害を負わせ、その結果、人を死亡させた場合は傷害致死罪(刑法205条、3年以上の有期懲役)という別の罪が成立する可能性があります。

罰則が違う

暴行罪の罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」、傷害罪の罰則は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と懲役、罰金双方ともに傷害罪の方が重たいことがお分かりいただけると思います。

なお、実際の量刑(刑の重さ)は、暴行の態様(武器使用の有無、回数、暴行の部位など)、被害の内容(怪我の重さなど)、被害弁償・示談の有無など、個別の事情を勘案して決められます。

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まとめ

暴行罪の成立要件は「故意」に「暴行」を加えたことです。

他方で、傷害罪は「故意」、「暴行」に加えて「傷害」と「因果関係」という要件が必要です。

暴行罪と傷害罪の違いは

  • 暴行罪は傷害という結果を伴わない犯罪、傷害罪は傷害という結果を伴う犯罪
  • 暴行罪より傷害罪の方が罰則が重たい

という点となります。

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